エスコートは ページ29
その後はスムーズに、それでもぎこちなく
食事を済ませレストランを出た
扉の横で頭を下げるスタッフに次元は片手をあげた
「ちょっとお金……」
次元「後払いなんだよ」
「なら先に渡しておく」
そう言って鞄を開ける手を次元が制した
次元「俺が誘ったんだ、女は素直に奢られとけ」
「お生憎、私も諸事情によりお財布あったかなの」
そう言って余裕の表情を見せるAに次元は小さく舌打ちを打った
次元「黒い金だろう」
「お互い様」
前を歩く次元から3歩ほど離れて階段を降りる
「……ッひゃ!」
次元に追いつこうと階段を急いで降りようとするが、最後の数段を踏み外した
だがAの身体には痛みは走らず、最近嗅ぎなれた香りが包んだ
次元「……あのなぁ、こういう所では並ぶんじゃねぇ」
「っ……ごめん」
抱きとめられて直ぐにかけられたその言葉にAは眉を落とした
次元「…エスコートっていうのは」
ポツリと発せれた言葉に顔を上げる
次元「基本的に女が前で、女が先だ」
その言葉を聞き店に入ったのも席に着いたのもAが先だと気づく
次元「だが下りの階段だけは、お前みたいな鈍臭い奴のために前を行く、守ってやれるからな」
腰に回された手が離れていくのを感じながら、Aは少し前を歩いた
「……ありがとう」
一歩半、後ろにいる次元に振り返らずに声をかけた
その返答はなかったが、代わりにそっと触れられた手に気づき振り返る
次元「……話してぇことがあるんだが、いいか」
帽子を深くかぶられ表情は分からなかったが、いつもより優しい声の次元に、Aは頷いた
111人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ