バーボンをストレートで Part2 (ページ21)

今日:12 hit、昨日:12 hit、合計:92,945 hit

ネクタイ【次元side】ページ21

部屋の鍵が開く音がした

目は開けてない。

アイツの顔を、見ないために。

それでも部屋に入るとAの香りが身体を抱きしめ、不意に目を開いた

目の端に映る、窓際の写真

見たことのない顔で微笑むAと、知らない男の姿

それを見て、切なさに似た感情を持った

Aはベットまで俺を運ぶとそこに座らせた

｢水、持ってくるから……｣

そうしてAが離れると頭が急にグラグラ揺れた

それを納めるべくベットに横になると目を瞑りながらもらったネクタイを緩めた

次元｢ｯ！！｣

突然Aが俺の手に触れた。

｢お水……持てそう？｣

触れた手から水が手渡されると

火照った身体に、Aの触れた所が熱に帯びる

｢汗、すごい……｣

それを知ることも無く、Aは俺の首に手を伸ばした

濡れたタオルで頬に手を添え汗を拭うAに

何かが、切れた

｢ひゃ……ｯ!!｣

頬に添えた手を握り身体を反転させAに覆い被さる

｢じ、じげ……ｯ｣

心配そうに見つめるAのを見て、右手を離し頬に添えると顔を近づけた

刹那

Aが渡した水の入ったグラスが悲鳴のような音を立てて割れた

突然現実に引き戻され歯をくいしばる

再び汗が滲み、Aの手首を抑える力が強くなる

｢ﾝｯ!!……じ、げん……｣

Aは空いている手で俺の頬に触れようとすると

僅かに残った理性でその手を払った

その瞬間、直ぐに起き上がり部屋を出ようと扉に向かった

｢待って！！｣

Aもすぐに追ってきたのか、窓際で手を掴まれた

｢待って………、次元…｣

再び名前を呼ばれると、写真の男と目が合った

ｿｲﾂに見せつけるように振り返り

Aの唇に触れた

それは数秒、Aは目を閉じるのも忘れ大きく見開いた

次元｢……今度は、こんなもんじゃすまねぇぞ｣

そう言って扉に手をかけ外へ出た

最後に目に映ったAの頬には涙が伝っていた

それを拭うのは、俺ではいけない。

そう感じながら

部屋に置いたネクタイを渡す

Aの笑顔を思い出したのだった