バーボンをストレートで (ページ5)

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ベーコン豆ページ5

先程の通りに戻る

数時間前の見慣れた景色を歩くと見えてくる店

小窓を覗くと誰もいなく、女は洗い物をしている様子だった

扉の前でそっと息を吐きドアを開けた

その瞬間女は驚いたように顔を上げ次元の顔をよく見た

大きく開かれた瞳は直ぐに細められ微笑みに変わる

｢いらっしゃいませ｣

透き通る声に小さく頷くと

透明なカウンター席に向かう、客はいなかった

女の前に座ると小さく首を傾げる

｢何にする？｣そう聞かれたように思えた

次元｢バーボンをストレートで｣

｢かしこまりました｣

傷がない透明なグラスにゆっくりとバーボンを注ぐ

丁寧且つ素早く次元の前に差し出すとそれをそっと口に入れた

そして女はもう1つのものを次元に差し出した

次元｢こりゃあ…｣

｢皆さんにお出ししてるんです、日によって違うんですけど良かったら……｣

出てきたのはベーコン豆の小鉢

それは次元の好物でよく自分で作っている

人に作ってもらう聞いがあまりない次元はそれを受け取った

次元｢俺はコイツが結構好きでな、ありがたく頂くよ｣

小さなティースプーンを手に取り口に運ぶ

素朴な味

それが第一印象だったが、程よい塩加減と

優しい味が次元の頬を緩ませた

そんな表情を見て女は微笑んだ

｢良かった、初めて作ったんです｣

次元｢大したもんだ｣

あまり深い会話はせず

次元は酒とベーコン豆を程よく楽しんだ

代金とチップを置いて立ち上がる

次元｢美味かったぜ、また来るよ｣

｢ありがとうございます｣

ポケットに手を入れて店を出ると

数時間前より強く降る雪に目を細めた

だが酒で温まった次元の身体は

そんな寒さを感じなかった