好きでいてもいいですか part3

再開 ページ10

「じゃあね」





軽く手を振って、勇気と別れた。

道、逆だし





イヤホンを耳にさし、携帯で音楽を流す




なんにも考えないで、ボーッとしながら自転車に乗るのが好き




天気が良かったから、少し遠回りした





サイクリングロードみたいな所。
川の横で、夕日が綺麗に見える




結構オススメな所




自転車を降りて歩く。
また、何も考えずに








すると、肩を叩かれた





振り返った、何も考えずに





翔「覚えてる…俺のこと」





「……覚えてる、最低な人。」





桜木翔。
元彼、色々あったよな。


嫌なこと多かったけどさ。




「私用事あるの、帰っていい？」




ペダルを足を掛けてすぐ、手を引かれた





翔「…謝りたい」




糸に引かれたように、ペダルから足を離してベンチに座った




翔「Aに、酷いことした」




「うん」




翔「嫉妬した、周りの人みんなに」





「うん」




翔「謝って済むことじゃないけど…本当にごめん」





「………」





翔「…A、ないてる……？」






「泣いてる…っ」





今の言葉は、ずっとずっと、翔が一度だって言わなかった言葉。





「謝られたことなんて、一回もなかった…」




さっき、糸に引かれたような感覚は、未だにその言葉を待っていたからかもしれない




「喧嘩しても、先生に怒られても、自分が悪いことしても……」




翔「…西浦先生に、大人になれって言われた」




「……え……」







翔「俺もお前に、感情でぶつかったから人の事言えないけど、大人になったら、いろんなもの守れるぞ。って」




「ぅ……せん、せぇ…」







涙が止まらなかった





あなたは本当に




私を守ってくれてたんですね




こんな形で、気づきたくなかった




あなたの隣で、気づきたかったです









泣きじゃくる私の、震える肩を



馴染みのある、優しい手が包んだことを



密かに感じていた

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