好きでいてもいいですか part3

最初で最後 ページ29

どのくらい走ったんだろう





よく、恋愛映画なんかで好きな人のところへ走っていくシーンがある。





そんなの絶対ないし、偶然会うなんてもっと有り得ない。





そんな夢のないことを思っていた







でもそれは、夢なんかではなくて








西浦「Aっっ！！」









運命であって









「先生っっ！」







必然であった





ほかの何にも入り込めないくらい、私達は抱きしめあった






あなたがいるって、確かめるように体に触れた




西浦「ごめんAっ……」





「先生っ……嫌いにならないで…っ、好きなんです…！」





「あなたの事しか、何をしていても考えられないの…っ」





西浦「A…っ」





先生は、ずっと私の名前を呼んでいた。




心地よくて、タバコの香りがするスーツ。





すこししゃがれた声





「先生…一緒になりたいんです…っ」





「今日だけでいいから…今日だけ……」





そこからは、先生に唇を塞がれて言えなかった





流れるようにホテルに入って、そのままベットに倒れ込む




西浦「恵が妊娠した」




「ぇ…」




西浦「お前に、同じ思いはさせられない…だから、少しだけするのが怖い」





頬を撫でられながら言われた





「いいんです…後悔なんてしない」




「だから、きてください」





両手をめいいっぱい伸ばしてあなたを導く





あなたの体の重みがずっしりと感じる




あなたの吐息




あなたの汗の香り




ちょっとした表情






すべてが私にとって、幸せに導く材料にしかならなかった






「せん、せ……っ」





西浦「名前…よんで…っ」





「っ…孝至…さんっ…！」





西浦「いいこ、A…」







もう二度と、こんなふうにあなたには触れられない





最初で最後の、幸せな時間だった

最後のキス→←またお店で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す