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「佐為さん、どれ引く?」
「それじゃあ、私はこれで」
「それだと…あ、佐為さんあがりだ」
「くそー!佐為が一番かよ!」
佐為が指さしたカードを自分の手札から、佐為の手札のもとへと移す。
彼が引いた私の5のカードは、彼の最後の一枚である5と合わさり消えた。
最初にあがることができた佐為は嬉しそうに「やったー」と言って飛び跳ねる。そして佐為があがった今、私とヒカルの一対一である。
私達は現在ババ抜きをしている最中だ。
ボードゲーム部で私がやったババ抜きを話したところ、佐為がそれに興味を示したので三人ですることとなった。
それも条件付きで。
「負けた人は勝った2人の言うことをなんでも聞く」
それが条件だ。
勝った佐為の願いはもう分かりきっている。きっと碁が打ちたいだとか、そんなことだ。
しかしヒカルや私の願いははっきりとはわからない。そのためお互いより緊張が走った。
現在ヒカルが二枚、私が一枚カードを所持している。そして私が彼のカードを引く番だ。
彼のカードを睨む。黙ってじっと見つめる私にヒカルは「早く引けよ」と急かした。
(考えたって仕方ないか。ジョーカー引いても負けるわけじゃないし)
恐る恐るカードを引く。その瞬間ヒカルは笑って「よっしゃ」とガッツポーズ。
手元を見ればそこにはジョーカーのカードがあった。顔を上げ、笑顔のヒカルを見て奥歯を噛み締める。
カードを見えないようにシャッフルし、彼の目の前へ広げる。
今度はヒカルが私のカードをじっと見つめて考える。考えるだけじゃわからないと踏んで、カードに手を当てて私の反応を見ていた。
その時の彼は上目遣いでこちらを伺い、眉間にはシワがよっていた。それがすごく可愛くて彼がジョーカーでない方のカードに手を移した時、吹き出してしまった。
それを勝利の笑みと勘違いしたヒカルは、反対側のジョーカーを引いた。
予想が外れたのが衝撃的だったのか、ヒカルは「嘘だろ」と大声をあげてシャッフルすることを忘れそのままジョーカーを手元に戻した。
それから私は簡単にジョーカーでない方のカードを引き、ヒカルはしまった、というように顔を青ざめ撃沈した。
「くっそー!」
「約束は約束だからね!ね、佐為さん」
「はい!ではヒカル、私に碁を打たせてください♡」
「あー!もう佐為のそれはわかってたよ!…で?Aは?」
私がえっと…と言葉を詰まらせると、ヒカルは「お金ねーから奢るとかは勘弁な…」と言って肩をがっくり落とした。
「中学生にそんなお願いしないよ…今度一緒に遊びに行きたい」
「そんなんでいいの?」
私が頷くと、彼は「変なやつ」と呟いた。
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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時