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「今日どうだった?ヒカルくん」
「…俺、囲碁もっとやってみたいって思ったよ」
22時を過ぎる頃、ヒカルの部屋のベットで三人横に並んで今日の大会について話す。
大会は二勝一敗で海王に勝つことができたが、結局知り合いにヒカルの事がバレてしまい葉瀬中優勝にはならなかった。
「…私も。ヒカルくん達見てたら囲碁もっとやってみたくなった」
「Aが?」
「うん。…そうだ、明日放課後一緒に碁会所行ってみようよ!」
「放課後?別にいいけど」
「やった、じゃあ明日小学校迎えに行くから。約束ね」
そう言って小指を差し出すと、ヒカルは「子供かよ」と言ってその指を拒んだ。
私が無理矢理彼の小指を掴み「指切りげんまん」と口ずさみながら手を揺らすと、ヒカルは怠そうな顔をしてされるがままになった。
佐為は「それ聞いたことがあります」と目を輝かせながら私達を見ていた。
放課後碁会所に行く約束をしたものの、次の日大雪警報で休校との連絡が届いた。
私達はヒカルの部屋で漫画を読んだり雑談したりとだらだら過ごしていた。
「雪、止んできたね」
「ほんとだ。今なら外出ても大丈夫そうだな」
「えぇ、でも警報で休みになったのに…」
「いーからいーから!」
ヒカルは私の手を掴み外へ連れ出そうとする。それに私は「わかったから」と言って、厚着をしてから行こうと提案した。
辺りは真っ白な雪に包まれ、冷たい空気が肌をチクチクと刺した。
平らで何の跡もない雪に足を踏み入れる。それが何だか楽しくて、ヒカルと共にどんどん先へ進んだ。
後方の道は、私とヒカル2人だけの足跡が残っていた。
「やはりいつの時代も変わらず雪は綺麗ですね」
「へぇ…佐為さんって雪だるま作ってたりしたの?」
「私は作ったことがないですが…Aはどんな風にするの?」
ヒカルとは別に、佐為と私はしゃがみこんで雪だるまを作る。
手のひらサイズの雪だるまを作ってみせると、佐為は可愛いと言って扇子でだるまをぽんぽんと叩いた。
そんな佐為の方が可愛いくて彼をじっと見つめていると頭に雪玉が強く当たった。
当たった場所がまだ冷たいことを感じながら雪玉が飛んだ方向に視線を移す。
案の定先程の雪玉はヒカルが投げていたようで「クリーンヒット!」と言ってガッツポーズしていた。
私は急いで雪を握り彼に当て返す。
当たった場所は彼の顔面のど真ん中。余程痛かったのかヒカルは顔を手で覆いその場にへたりこむ。
心配で彼の方に近寄り顔をのぞき込むとかかった、というようにヒカルはニヤリと笑って油断している私に雪玉をぶつけた。
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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時