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「んー!美味しい!」

おばさんが作ってくれたハンバーグをじっくり噛み締めながら食べる。
おばさんは「Aちゃんが今日から家に来てくれるし、気合いいれたの」と嬉しそうに言った。

「本当にありがとうございます」
「いいのよ、Aちゃん葉瀬中でしょ?ヒカルも来年そこに行くの。今年はAちゃん受験で忙しいと思うから、来年ヒカルに勉強教えてあげて」
「あはは、私人に教えれるほど頭よくないですよ」
「そんなの別にいらねーよ、俺最近社会の成績いいんだから」

そしておばさんはヒカルに小言を言い、ヒカルはそれに言い返す。そのやり取りが面白くて思わず笑みが溢れた。

だが気になることが一つある。
平安の格好をした男性は椅子に座らず立ったままで、皿も用意されていない。さらには一切料理に手をつけてないのに誰もそのことに疑問を持っていないのだ。

また街ですれ違った時のように無意識に彼に視線がいく。そうすればやはり彼と目が合ってしまい、ぼーっとしていた私をハッとさせる。

また慌てて視線を逸らすが、視界の隅に彼がこちらへ近づいて来るのが映った。

どうしよう、と一気に心臓がバクバクと動き出し額に汗が滲む。
ヒカルやおばさん達に視線を向けるが、皆それに気がついていないようで談笑を続けていた。

彼が近くに来る。そう感じると、彼は私に何をしようというわけではないだろうが考えるより先に身体が動き、勢いよく席を立った。

「ご、ちそうさまです!お皿っ、洗いますね!」

そう言って皿を持って台所へ早足で向かうと、「あらいいのよ、私が洗っておくから」とおばさんが言った。

恐る恐る彼との距離が離れていることを確認したあと「ありがとうございます」とおばさんに伝えた。
その後私はトイレに行くと言い訳をして彼がいるダイニングから避難した。

(感じ悪かったよね…)

トイレから出て、先程の自分の行動を振り返る。
どう考えても失礼な態度を取っていると考えたら余計に落ち込んでしまう。もう一度今日をやり直したいと強く願う。

「なぁ」

声が聞こえたのでその方向へ振り向くと、そこにはヒカルと彼がいた。
思わず肩に力が入り後ずさりしてしまった私を見て、2人は余計に顔を曇らせた。

「お前、さっきから変」
「ご、ごめん…」
「別に謝って欲しいわけじゃねーよ。ただ俺が何かしたのかって…」
「何って…う、えぇ…」

私はヒカルの後ろに立つ彼のことをどう失礼のないように話すか考え、思わず間抜けな声がこぼれた。

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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時

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