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「みんな準備よく頑張った!明日の創立祭、いいものにしていこうな!」
先生が皆の前に立ちガッツポーズを取る。皆それにつられて「おー」と拳を空に向かって上げた。
「A!」
「朋子、明日楽しみだね」
友人の朋子が私の肩を叩き名前を呼ぶ。そのまま二人並んで教室まで歩いた。
準備が長引いたせいでいつもの帰宅時間よりも遅くなり、空が赤く燃えていた。カラスの声もよく聞こえ、それがとても新鮮だった。
「Aは明日誰か誘ったりしないの?他校の人とか」
「うーん…考えてなかったな。誰かか…」
朋子にそう言われ浮かんだのがヒカルだった。
明日誘ったら喜ぶかな、そう考えると早く帰って彼を誘いたくなり足早になる。
その様子を怪しむ朋子に「まさか彼氏?」と疑われたので「弟みたいな子だよ」と慌てて訂正した。
「ヒカルくん、入るよー」
風呂を出て髪を乾かした後、すぐにヒカルの部屋へ向かった。
早くヒカルに創立祭への誘いを話したくて今までずっとうずうずしていたのだ。
ヒカルの返事が聞こえる前に勢いよく扉を開き、こちらに背を向けて漫画を読んでいる彼に抱きついた。
「あー!もう、何だよ!」
「わっ、…あはは、ちょっと聞きたいことがあって」
ヒカルは鬱陶しいといった顔で私を引き剥がし、漫画に目線を戻した。それが少し寂しく感じたが、続けて話した。
「明日葉瀬中で創立祭が開かれるんだけど、知ってる?」
「あー…そういやあかりに誘われたな」
「え!?あかりちゃんに!?」
ヒカルが既に創立祭に誘われていたことを残念に思う気持ちと、あかりの恋心を応援したい気持ちが同時に現れまぬけな返事をしてしまう。
「それじゃあ明日創立祭行くの?」
「行かねーよ」
「え?何で?」
「だって女と二人でそんなとこ行ったら笑いもんにされるだろ」
ヒカルの言葉に思春期だな、とほっこりしたがすぐにこの創立祭でヒカルとあかりの関係が発展するかもしれないのだからヒカルを創立祭に行かせるべきだと考えヒカルの読んでいる漫画を取り上げた。
ヒカルは「何すんだよ!」と言って取り上げた漫画を奪い返そうとするが、私は取られないように漫画を高く上げて言った。
「明日絶対来てよ!創立祭!」
「はあ?」
「私クッキー売るからヒカルくんとあかりちゃんの分サービスで取っておいてあげるし」
「…たこ焼きのがいい」
「じゃああげない」
「嘘です嘘!行くよ!」
ヒカルの「行く」という言質が取れたため、私は満足してヒカルに漫画を返した。
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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時