【ヒカルの碁】弟なんかじゃいられない (ページ13)

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「やっぱアレはまずかったよなァ…つい口走っちゃったもんなー」
「対局やり直しするみたいだったね」
「あの子達に悪いコトをしました…」

部屋を出た後、私達は雑談を交わしながら廊下を歩く。
ため息をつき囲碁への文句をブツブツと垂れるヒカルに、「ここ囲碁大会の会場だから！」と人差し指を口に当てて静かにするよう促す。

曲がり角を曲がる際、前を見ていなかったヒカルは男性とぶつかった。

咄嗟に謝ったものの尻もちを着いてしまったヒカルに「大丈夫？」と言って同じ目線まで腰を下ろした後、その男性を見上げる。

彼は和服姿で異彩を放っていた。
眉間に皺を寄せただ無言でヒカルを見下ろす彼に二人が唾を飲む。

特に叱られたりせずに「気をつけなさい」の一言で彼はその場を離れ、ホッと胸を撫で下ろす。
だが佐為だけは彼の後ろ姿を睨み続けていた。

会場を出てしばらくするとヒカルと佐為が言い合いを始めた。
佐為はもっとあの場に居たかったようで、出ていく原因となったヒカルに泣きながら文句を言った。

ヒカルはそれにムカついて佐為に言い返し、「佐為がよけいなコト言うからだろーっ！」「一言多いのはヒカルの方です！」と周りを気にせず二人は大きな声をあげる。

周りの視線に気が付きヒカルの袖を引っ張るが、彼は聞く様子がない。
ヒカルが動きを止めたのは、一人の男の子の声だった。

「進藤…進藤ヒカル！」

塔矢アキラだった。
彼は息を切らし、大きな声でヒカルの名前を呼んだ。

「塔矢じゃないか！どーしたんだよ」
「あ…いや……あ」

しどろもどろになっている塔矢と目が合い軽く会釈をすると、彼もそれを返してくれた。

ヒカルが彼に囲碁大会に出たかと聞くと、彼は有無は答えずヒカルに質問を返した。

しばらくの沈黙の後、ヒカルは口を開いた。

「マジすげーの。…ちょっとカンドーだよ」

ヒカルは囲碁大会での皆の真剣さに心を動かされたと語った。それにわかるなぁと心の中で呟き、首を縦に小さく降った。

それに塔矢は困惑した表情を見せ、「キミは真剣になったことがないの？」とヒカルに問う。
ヒカルが何も答えられないでいると、彼は「手を見せてくれないか」と言ってヒカルの手をまじまじと見て考え込んでいた。

「…キミはプロになるの？」
「プ、プロォ！？だははは、囲碁のプロなんて考えたことねーよ、塔矢はプロになるつもりなのか？」

ヒカルの問いに、彼は真剣な面持ちで「なるよ」と答えた。