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「え、行くの?こども囲碁大会」
「行ったら悪いかよ」
「悪くないけど、ヒカルくん興味なさそうだったから」
ヒカルは「興味はねーけど…」とため息混じりに呟き、佐為の方を見る。
その視線で何となく原因を察し、「なるほどね」とだけ言って囲碁大会のチラシに目を移す。
最近は就寝前にヒカルの部屋で軽く雑談をすることが日課になっている。時には雑談だけでなく佐為と私でヒカルの勉強の手伝いをしたりなんかもしている。
「ねぇヒカルくん、私も行きたい」
「またお前も?」
「別にいいじゃんか。三人で行った方が楽しいよ!ね、佐為さん」
「そうですね、Aも囲碁に興味を持ってくれて私は嬉しいです」
私と佐為が「ねー」と顔を見合わせると、ヒカルは諦めたようにため息をついた。
「明日楽しみ」と言って彼の頭を撫でると、その手を彼に素早く振り払われ何とも言えない気持ちになった。
しょんぼりしている私を見て、ヒカルは「だー、またすぐそうやって!」と面倒くさそうに言った。
一緒に住んでいるのだから、もっとヒカルと仲良くなりたい。密かにそう思った。
「う…うわぁ」
「すっ…ごいねヒカルくん!こんなに沢山集まってるんだ…みんなすごい真剣…」
こども囲碁大会は、予想を遥かに上回る子供達が真剣に碁盤と向き合っていた。
静寂の中で聞こえる碁石を打つ音に何だか心を踊らされる。
ヒカルらが見ている対局に目をやる。
私にはどちらが有利なのか、勝っているかなんてわからないが、その盤上に釘付けになった。
いや、盤上というより真剣な子供達の顔にと言った方が正しい。
(私、こんなに何かに真剣になったことあったかな…)
「おしい!そこじゃダメだ、その上なんだよ」
そうヒカルは子供達の対局に口を出すが、すぐにしまったという風に顔を青ざめ口を手で覆い隠した。
謝罪する間もなく、ヒカルは関係者であろう男性に「何を考えてるんだ!対局中に口をはさむなんて!」と取り押さえられる。
ヒカルが奥へ連れて行かれそうになったため、彼の連れであること、同行することを伝え、彼の後をついて行った。
奥へ連れて行かれたものの、ヒカルはヘラヘラとした態度を見せていたせいで余計に大人達は苛立っていた。
私が小声でヒカルの名前を呼ぶと、彼は気まずそうに私から目を逸らし、「すみません、ゴメンなさい」と男性らに謝った。
何とか大事にならずに帰してもらえることとなり、部屋を後にした。
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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時