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「そしてこうやって石を囲めば、はい!この石はAちゃんのものになる!この石はその蓋、碁笥に置くんだよ」
「なるほど…!何となくわかりました!」
「じゃあ…置石九子で打ってみる?」
「や、やってみます!…教えてくださいね?」
ヒカル達が碁を打っている間、私は客のおじさんに声をかけられ囲碁を教えてもらうこととなった。
ヒカル達とは少し離れた席。
ここにいる皆が親切で快く私に碁を教えてくれるが、やはり少し人見知りな私にとっては周りが歳の離れた大人しかいないというのは緊張してしまう。
度々ヒカルの方に視線がいってしまうが、彼らの周りには大人はいないようでヒカルもリラックスして打っているように見える。
それを見て歳の近い子が傍にいていいな、なんて思ってしまう。
おじさんが指を指した場所に黒石を置いていく。先程教えてもらった碁石の持ち方を思い出す。
人差し指と中指で碁石を挟み、線が交差する点に置いていく。
プロが打つ時のようなパチッとした気持ちの良い音は鳴らないが、何だか石を打つ度わくわくした気持ちになる。
「A」
「…あれ、ヒカルくん。終わったの?」
「うん、帰ろーぜ。お前も打ってんの?」
「ううん、打ち終わっておじさんに教えてもらってたとこ。…おじさん、ありがとうございました!今日は帰ります」
「いいのいいの、また来なさい」
そう言って微笑む彼に一礼し、ヒカルと共に出口へ進む。
新しく来た客と談笑する受付の女性と目が合い軽く会釈をすると、彼女は「あら終わったの?」と口を開けた。
「うん、やっぱ対局は早いわ俺。打つのに時間かかってヘトヘト…」
「私も…なんとなくルールわかりはじめたって感じです」
「あらあら…そうそう来週こんなのがあるんだけど」
彼女から”全国こども囲碁大会”の案内チラシを渡される。
お姉さんは「よかったら見に行ってみたら」と言ってくれたが、ヒカルは全く興味が無さそうだった。
顔に出やすいヒカルに焦りつつ、「ありがとうございます」とだけ伝え、碁会所を後にした。
「ヒカルくんと佐為さん、どうだった?」
帰り道。私が二人に対局の結果を聞くと、二人は「勝ったぜ」「勝ちましたよ」と声を揃えて言った。
興味が無さそうなヒカルとニコニコと嬉しそうな佐為の対比が面白くて思わず笑ってしまう。
「へぇ!やっぱ佐為さんって強いんだね…囲碁のために1000年も幽霊してるだけあるっていうか…」
私がそういうとヒカルはぶはっと吹き出した。
「何関心してんだよ」と口を大きく開けて笑うヒカルにつられ、私も「だってそうじゃん」と言って笑った。
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作者名:ちゅぴ | 作成日時:2022年9月10日 2時