【ヒカルの碁】弟なんかじゃいられない (ページ1)

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「お母さん、この食器って必要？」
「うーん…そうね、一応入れといて」

母に「オッケー」と小さく返事をし、先程手に取った食器をダンボールに詰めていく。

現在、私達家族は明後日の引越しのための準備をしている。とはいえここを離れるのは私を除いた両親2人なのだが。

父の地方への転勤が決まった時には、私はこちらの高校への進学を決めていた。そのため私だけがここに残ることとなった。

私は母の友人の家に居候させてもらうことになった。
一度挨拶に行ったが、おばさんもおじさんも優しくて良い人だった。
私より3つ下の息子もいるらしいが、私が挨拶に伺った時には外出していたようで会えなかった。

「あ、ガムテープなくなっちゃった」

そう声が聞こえたので母の方に目をやると、既に使い切られているガムテープを持って母がこちらをじっと見つめていた。
これは私自ら買ってくると言うのを待っている目だ。

「…はいはい、買いに行くよ」
「あら、じゃあ、はいお金」
「どーも」

母から500円玉を受け取り、ガムテープを買うためコンビニへと向かった。

(コンビニってガムテープあったかな…なかったら面倒臭いなぁ)

どうか一番近くのコンビニにありますように、と心の中で小さく願う。

この辺りは現在人通りが少なく、今ここを歩いているのは私一人だけだ。
そのせいか小さい頃両親とこの辺りを散歩をした記憶が少しずつ、ぽつぽつと浮かび上がってくる。

二度と両親と会えない訳では無い。
会えない訳では無いけれど、今のように毎日顔を合わせることができなくなると思うとやはり寂しく感じて、次第に目頭が熱くなってくる。

泣いているところを誰かに見られでもしたら恥ずかしい。そう思って目線だけを上にし、涙を堪える。

するとこちら側へ向かってくる2人に気がついた。その2人を見ると驚きのあまり涙が引っ込む。

(な、…にあの格好！？)

1人は小学生くらいの男の子。
そしてその子の後ろには平安の貴族の様な格好をしている綺麗な顔立ちをした人が着いて歩いていた。

(女の人？でもあれって男の人の格好だよね…そもそも何あの格好！？前の男の子はなんであんなに普通そうな顔して歩いてるの！？)

あまりにも目立っているため、ついついその男性に目線がいってしまう。
私の視線に気がついたのか、彼と目が合ってしまいすぐに別の場所に視線を逸らして誤魔化した。

(見てたのバレたかな)

気まずく感じた私は歩く速度を早め、下を向いて歩いた。