郭の夜に咲いた花 ｛完｝

You ページ35

それからしばらく

深澤さんが出ていった襖をじっと見つめた

私が選んだ道が


幸せなのか


修羅の道なのか


分からない…。



深澤：(Aさん)



最後…深澤さんは私の本当の名前を呼んだ

どうして知っているのか

きっと私の名前を知っているのなら…彼の事も


でも、もうそんなことはどうでもいい


ダンダンダンッ


その時、荒々しく階段を上がってくる音が聞こえた


バタンッ!!



岩本：十六夜！！


A：…


岩本：…お前、断ったってどういう事だ！！



その大きな声を聞きつけてみんなが部屋に集まる



ラウール：…ちょ、照くん


向井：どないしたん…っ、そない怒らんでも


岩本：身請けを断ったんだぞ？！
そんな事が許されると思ってんのか！


渡辺：…断った…って…A、お前…


宮舘：…


向井：まじか…っ



みんなが私を困ったように見つめる

それも当然だ

本来買わられる立場の花魁が…

客の身請けを断わることなんて許されない



向井：深澤さんがお優しい方やったからよかったけど…普通の人なら折檻されて、酷い目に合ってるところやで？


A：…。


岩本：一生ここにいるつもりか？


A：…私、


岩本：芸妓はみんなここから出たいと思って、お前のいるこの場所を目指して死ぬ気でやってんだよ。売られてきた芸妓なら尚更だ。忘れんなよ…お前は花魁だ。


ラウール：…Aさん


岩本：…阿部さんを座敷にお招きしろ。


向井：…え


岩本：身請けの話は俺が進める。
阿部さんの所に身請けして貰えるように


A：…照っ、私は 岩本：あ？



自分の意志を全てねじ伏せられる感じ

初めてココに来た時に感じた怖さ

照のその目で睨まれると…私は何も言えない



岩本：花魁としての最後の仕事をしろ



そう言って部屋を出ていく照



A：……でも、


向井：…A、さすがにこれはあかんよ…。


渡辺：…


宮舘：幸い深澤さんがお怒りになってないようだったから良かったけど…。


向井：ホンマやで…、普通なら…はぁ、
なんでこんなことしたん…



好きな人がいるの

それだけの事

それだけなのに…私の生きる世界は

こんなにも苦しくなる



A：…ごめんなさい



目黒：(俺も…愛してる)



愛した人が、

郭の外にいる人だった

その人との幸せを望んでしまった



ただ…それだけなのに



ねぇ、蓮



私は…




そんなに悪いことをしたのかな



私の選んだ道はあなたへは繋がらないみたい

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