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「だから小瀧望くん」
「あいつの名前が小瀧望なのはわかったから」
のんちゃんが智洋のお迎えにいってくれるようになったから心置きなく１時間残業して帰宅すると毎日わんこのように玄関まで走ってきて出迎えてくれるのんちゃんではなく、わかりやすく不機嫌な弟のしげに背広を掴まれ──あ。終わった。智洋とのんちゃんが晩ごはんにおいしそうなオムライスを食べているリビングの奥の部屋でしげによる尋問が行われていた。
「その小瀧望クンは一体何者なんや」
「……えっと一体何者なんでしょう」
「は？」
「や、もちろん身分証は確認させてもらったで！？」
「………淳太…お前それ本気で言うてる……？」
小首を傾げる俺の顔をみたしげはため息を吐いて智洋とのんちゃんがいるリビングに俺の手を引いて向かった。
「──小瀧望クン、やっけ。キミ、何者なの？」
「諸事情でちょっと前に住むところを失いまして…仕事もしてなかったのでアルバイトで生計を立てようとしてたんですがクビになったりと続かず…」
「ちょお…既に危険な臭いがぷんぷんしとるぞ」
「困ってたとこを淳太くんに助けてもらいました」
きっかけは俺が路上で倒れそうになったところを助けてもらったこと、そう伝えるとしげの眉毛がピクリと動いて鋭い視線がこちらに向く。
「…あれか、全然電話繋がらなかったあの日か」
「うん…しげにも迷惑かけた……ほんまごめん」
「俺に悪いと思うなら……身体壊れるくらいしんどいならとっとと帰って来いって。おかんもずっと心配しとる。おとんやって…！」
「大丈夫。のんちゃんのおかげで調子ええねん！」
「淳太くん…！」
「…っ、俺は認めへんぞ」
ないはずの尻尾をぶんぶん振って嬉しそうなのんちゃんと対照的にしげは顰めっ面で掴まれていた手首が痛むほど手に力が入っていた。
「…しげ」
寂しそうな智洋の「しげ帰っちゃうの？」にうしろ髪を引かれつつも頭をひと撫でして出ていったしげをアパートの下まで見送ろうとドアを出たら、痛いくらいに抱きしめられた。
「あんなヤツ…俺は反対やからな」
「結構いい子やで」
「そういうてあの女に騙されたのはどこのどいつや」
「…誰やったかな」
「俺はただ淳太のことが心配やねん」
「……しげ、照史が見てる」
この辺りに似つかわしくない黒塗りの高級車で迎えにきていた──俺の秘書になる予定だった照史も現在はしげの秘書。
「淳太のせいや！」
毎日怒られているらしい。
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作者名：26 | 作成日時：2022年10月21日 0時
