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びっくりしなかったと言ったら嘘になるけど、淳太くんが悪いひとには見えないし何より息子のともくんが可愛い。最初こそ人見知りして淳太くんの影からじーっと見てきたともくんも特製チャーハンで胃袋を鷲掴みしてから全然離れてくれないからお風呂も一緒して、いまは髪を乾かしたながれで俺のひざに落ち着いてテレビに夢中。
「智洋がこんな懐くなんてめずらしい」
「え、そうなんや。うれしっ！」
「この子大人があかんくて保育園の先生にも全然おしゃべりしてくれへんから困ってて…」
「ふーん…あ、ともくん寝た」
「智洋が他人のだっこで……信じられへん…」
俺にもおしゃべりはしてくれないけど、ひざのうえで寝てしまったともくんを淳太くんがだっこしようとしたら俺の袖を掴んで離さなくて。思わず苦笑い。
「ごめん…すぐ起こすから…」
「全然大丈夫」
「でも小瀧くん帰られへんやん」
「ああー…どっちにしろ、俺帰るとこないんで」
「えっと…それはどういう…？」
「家が無いんです！」
ごくごくふつうの一般家庭にうまれ、あまいマスクと天性の人懐っこさでみんなから愛されて平凡ながらも不自由なく過ごしてきた。高３の時スカウトされて読者モデルをやりながら大学に進み、新卒で大手企業に就職をした。
「いろいろあって１年そこそこで辞めて、そのあとは知り合いのバーで偶然出会ったやさしいおねえさんに拾ってもらって、家のことやりながらおねえさんが仕事から帰ってくるの待つ生活を…」
「それってヒモやん！？」
「おお、せいかーい。まあ３〜４軒渡り歩いて、先月までお世話になってた飼い主さんが彼氏と同棲することになって住むとこがないんです」
「で、職も失ったやろ」
「えへへ」
「えへへちゃうわ…これからどうすんねんな…」
淳太くんは盛大なため息を吐いたあと、ああでもないこうでもないとぶつぶつ何か呟いて頭を傾げながら真剣に考えはじめた。
「…自分、何ができんねん」
「最初に就職したとこではまともに仕事させてもらえなかったから…バイトやけど接客なら経験あんで」
「ちゃう。家事。何ができんの？」
「家事？ 家事ならひと通りのことはできるけど…」
「……家政夫やってみる？」
「かせーふ？」
「うん。うちの会社は無理やけど弟のとこ。あいつ独り身でしばらく結婚する気はないらしいし…どう？」
え。俺の再就職先考えてくれてたのか。
……ずるいわ。
→
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作者名：26 | 作成日時：2022年10月21日 0時
