３５ ページ35
.
先日の俺が早とちりしてネガティブ方向に暴走してからというもの、のんちゃんが過保護になった気がすると同時にしげからの連絡も増えた。心配させてもうたかな。
「今日飲み会やから遅なる」
「はいよぉ〜」
「男性の上司しか居らんし１軒目で帰るから」
と言って、ほんまに２軒目に向かった上司を見送って帰ってきたのんちゃんはほんのりアルコールとたばこの匂いを漂わせたぽかぽかの身体で俺を抱きしめる。
「奥さんと息子が待ってるいうてかえってきた！」
「もうー…付き合いも大事にしいや？」
「でもー？」
「うれしいよ、早く帰ってきてくれてありがとう」
「えへへ〜」
ほんで俺もちょっとだけ素直になれた気がする。
人間不信に陥って、自分の目を疑って、何も信じられずにいた俺がひとり、またひとりと信じられるひとが増えていったのはまっすぐなのんちゃんのでっかい愛のおかげ。
「のーんちゃんお風呂」
「じゅんたもはいる？」
「俺はもう智洋と入ったからのんちゃん入っといで」
「えー…ぜったい先に寝んといてや？！」
「起きてるから！のんちゃんこそ溺れんといてな？」
・
・
・
「淳太でた！」
「はーい。あ、その顔は髪乾かしての顔やな」
「へへっ、せーいかーい♡」
「しゃあないなぁ、おいで」
ただ、この酔った大型犬を風呂に入れて寝かせるのは、智洋を風呂に入れて寝かしつけるより遥かに手が掛かる。それもまた可愛いところ。
「のんちゃん、ほんまありがとうな、だいすきやで」
「──ん？なんか言うたぁ？」
「んーん、なんでもない。はい、乾いたから寝よ！」
ちょっとだけ素直になったけど、のんちゃんにこんなにも好きだよって気持ちは伝えたいけど、恥ずかしいものは恥ずかしいからドライヤーの騒音を借ります。
「こんだけちゃんと乾かしても朝起きらアレやもんな」
「でも寝癖直すのも手伝ってな」
「はいはい、おやす──」
「あ、待って」
何気ない一瞬だけど、智洋の寝顔をみてやさしく髪をなでながらふわっと微笑むのんちゃんがたまらなく好きで、くすぐったい気持ちをごまかすように布団に潜り込むとのんちゃんの大きな手が頬に伸びてきた。
「こちらこそほんまありがとう、だいすきやで」
「ばっ…〜〜〜〜のんちゃんのあほ！おやすみなさい！」
頭の先まで潜った布団のなかで思う。
どきどきしすぎて寝られへん。
と、
ああ、どうしよう。どうしようもなくすき。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 187人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：26 | 作成日時：2022年10月21日 0時
