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今日出掛ける前につたえていた時間よりはやく帰宅することになった旨のメッセージを入れたけど一向に既読にならないから迎えにいってしまえ、と流星くんの店を扉を開けた──いや、わかってたやん。バツあり子持ちのおじさんより、若くて可愛い女の子のほうがいいなんて最初からわかってたことやんか。
「それでも…信じてたんやけどなぁ……」
「あれ？小瀧は？」
「のんちゃんどーこぉ？」
「あー…えっと…」
運動音痴で小さい頃からしげにイジられてきた俺でもこんなに長い距離をこんなに早く走れるんや、なんて場違いなことを考えながら帰宅するとともとしげが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
嗚呼、あかんあかん。いつも通り笑顔で答えな。
「迎えに行ったまではよかってんけど、のんちゃんがどこ遊びにいってるか聞いてへんかったんよ…せやから途中で帰ってきた」
「知らんかったんかーい。なんや淳太アホやん！」
「あはは、ほんまアホやわ〜」
多分。いや、絶対しげは俺になにかあったことに気づいてて。そのうえで天邪鬼な俺の性格とともを不安にさせない配慮をしてあえて気づいてないふりをしてる。ああ見えてこいつそういうとこあるから。
「もうすぐ帰ってくるやろうし、ごはん食べてまお」
「のんちゃんおなかすいてないかなぁ」
「元々外でごはん食べてくる予定やったから平気やで」
「ふーん。しげは？かえる？たべてもいいよ？」
「ええの？ じゃあ食べて帰ろっかな〜！」
それから間もなくして帰ってきたままバタバタとリビングにやってきてなんとも言えない目で俺を見つめるのんちゃんは汗だくで肩で息をしていて、俺を追いかけて走ってきたのは火を見るより明らか。
「のんちゃん、おかえり。ご飯食べてきた？」
「じゅん──」
「小瀧。…汗、すごいで。とりあえず拭いてこいや」
「……せやな」
いつもと変わらないようすの俺にあからさまに目が泳いでわかりやすく動揺したのんちゃんに腕を掴まれ、叱られた子どもみたいな瞳に見つめられて身体が強張った刹那にすかさずしげが助け船を出した。
「ほなしげちゃんお手洗いに行ってきまーす」
「ごはんのときだめやで」
「漏れてまうの！今回だけやから許して！？」
「んー…いいよ」
下手な三文芝居に救われてばっかりや──弟に気を遣わせて助けてもらってばかりの兄で情けない。
せめてしげの優しさを無碍にしないようにしないと。
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作者名：26 | 作成日時：2022年10月21日 0時
