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智洋の赤ちゃん返りは思ったよりも深刻だった。いままではできてたあれこれが突然できなくなり、パパ取らないで!とのんちゃんを拒否するから順番で行っていた保育園のお迎えも毎日はまだ先生から「ともくんがパパやないと帰らへん言うてます〜」と応援要請がくる程。
「ともくんとぱぱとしげであしょぼ」
「のんちゃん仲間はずれにしたらあかんやろ?」
「んーん、やあなの」
「なーいやよなあ?」
「しげっ!」
そこに謎に初対面の時からのんちゃんを敵対視しているしげが加勢して、のんちゃんは「大丈夫!」と笑うけど俺が見てられなくてのんちゃん側についてしまい、結果的に余計ややこしいことになる始末。
「のんちゃんとしげで出掛けてきてくれへん?」
ふたりはわかりやすく「何でコイツと!?」と怪訝な顔をしたけれど、渋々了承してふたりで近所のスーパーまで智洋の大好物のりんごジュースとおかしを含んだ買い出しにいってくれた。
「とも、こっちおいで」
「ぱぱー?」
「ほらっ!」
「ひひっ、ぎゅーっ!」
お気に入りのわんわんのぬいぐるみを片手にやってきた智洋に両手をひろげるとふにゃーと笑顔をほころばせ、ポイッとぬいぐるみを捨ててとことこと胸に飛び込んできたので思いっきり抱きしめ返す。
智洋の赤ちゃん返りに困り果てて、応援要請を受けて保育園にお迎えに行った時にはまだ先生に相談してみたら「ともくんとふたりの時間減ってませんか?」と聞かれてハッとした。のんちゃんとの関係が変わっても絶対に智洋ファーストでいようと思っていたのに、どこかでやっぱり浮かれていたんだと思う…恥ずかしいけど。
「のんちゃんまだ?」
「まだ買い物中かな」
「……ぱぱだっこ…」
「なーに。寂しくなってもうた?」
「ん」
何か特別なことをするでもなく親子ふたりきりの時間をのんびりと過ごしていたら、まんまるのおめめでじっと見上げてきた智洋がのんちゃんを恋しがる素振りをみせた。
「確かに遅いなぁ…ちょっと電話してみよか」
「するっ!」
近所のスーパーに行ったはずが音沙汰なく2時間経過──不安になって電話してみたら秒で出た。
「のんちゃ!」
「え、あ、ともくんやん。なーに?」
「どこいるのー、早く帰ってきてーって」
「どこいるの、はやくかえってきて」
「はっ はい!」
「……わっ、ぷーぷーなってる」
通話時間数秒の数分後にはインターフォンが鳴ってドアを開けると肩で息をするのんちゃんとしげ。
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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時