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「中間淳太さん、結婚してください」
ほとんど職歴のない俺を複数回の面接と試験を経て採用してくれた中小会社で中途採用。わかってはいたけど薄月給で、仕事終わりに流星のバーでバイトして知り合いのツテを使えるだけ目一杯使ったけど思ってたよりも指輪の準備と婚姻届を埋めるのに時間が掛かってしまった。
「給料の3ヶ月分ってやつ、やりたかってんけど」
「のんちゃんってほんまベタが好きよな」
「ええやろ別に……で、返事はもろてええですか」
「──不束者ですがどうぞよろしくお願いします」
ともくんを預けてふたりきり、いつもより背伸びしてドレスコード付きのレストランで食事をしたあと夜景の綺麗なホテルでプロポーズをした俺をベタ好きのロマンチストだと笑った淳太が抱きついてきた。
「俺らがはじめて会ったのもホテルやったよね」
「ああ、淳太がボロボロやった時」
「そう、のんちゃんがヒモやった時」
「…あの時は一応脱ヒモしてたし」
「家はなかったけどな」
「淳太ぁ〜!」
「ごめんごめん、冗談やって〜…あっ、しげ」
あの日と同じように枕元で震えるスマホに手を伸ばしベッドから出ていこうとすると淳太を後ろから抱きしめて制止する。
「電話出んといてっていうたら…めんどい…?」
「や…ともになんかあったら…あかんし…」
「…ん、いい子にしてるからここで電話出てや」
長い、長すぎる。淳太と弟さんの電話が長すぎて、淳太に抱きついたまま手持ち無沙汰の俺はどんどん悪戯心がくすぐられていく──が、目のまえにスマホ。
「しげがのんちゃんに代われって」
「……はい、小瀧です」
『お前いま淳太に余計なことしようとしてたやろ』
「えっ…どっかでモニタリングしてます!?」
『おい!…まあいいや。いや、よくないけど……えっと…その…あれや、淳太のこと頼んだ。泣かせたら許さん』
「まかせてください」
『ん』
「あ、今日から俺もお義兄さんやで、しげ♡」
『てめぇ、』
ぎゃあぎゃあうるさいから通話終了。一部始終を見てた淳太は呆れたように笑ってて、その顔が可愛かったからキスをした。
「ずっと確認したかったんやけど……あの日俺らベッドに下着姿やったやんか…しかも俺歩くのもしんどいくらい下半身だるかったんやけど…もしかして……」
「してへんよ」
「え、あ、そう…」
「あら?残念やった?」
「……あほ」
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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時