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就活をはじめて２週間。相手にされるはずもないとわかってて記念受験した大手企業の書類選考を通過して早速本日面接に赴き、さらっと終わった面接の最後に企業側から提案と内定をいただいた。
「それがどうしてん、浮かない顔して」
「…いや」
「企業からの提案ってなに言われたん」
「小瀧くんは顔が、ルックスがいいよねって…ウチの看板になってほしいんだけどどうかなって…会議についてきてくれるだけでいいってさ」
お飾り人形──新卒で入社した某大手企業で社員たちから呼ばれていた俺の渾名──会社の業務内容に惹かれて希望して入社後は会社のためにこんなことがしたいってたっぷりの熱量をつたえて、それが面接官にひびいたものだとばかり思っていた。フタを開ければ俺がした仕事なんて社長や上層部の会議やパーティに同行してとなりでにこにこして相手方に失礼がないように接待するだけ。まさにお飾り人形やった。
「今すぐ断りの連絡入れといで。のんちゃんのルックスは確かにいい武器やで…やけどのんちゃんの良さはそこだけやないやん。そこに気付けない会社なんてこっちから願い下げや」
「でも大手で給料もええし…」
「のんちゃんがつらい思いして働くなんてアカン」
「俺と結婚したくないから…？」
「おん。せやな、そんな見る目ない会社に勤めとる男とは結婚できひんなぁ……俺はセンスのいいやつが好きやねん、シングルファザーの俺を好きになるような、な？」
ずっと苦しかった。
寄ってくるひとはみんな俺じゃなくて俺の外見が目当てたで、ほんまの俺のことなんてちっとも見てくれなかった──結局は外見を利用して生きるしかできない自分が惨めで醜くて、お前には何もないと言われてるようで苦しくてつらかった。
「もう〜…泣かんといてって…俺がいじめてるみたいやんかぁ……その、就職、ゆっくりでいいから、俺ちゃんと待ってるから」
「俺センスあるし〜っ！」
「うんうん、せやな、よう知ってるよ」
そのあと断ったら電話口で嫌味を言われて、ああ、この会社を選ばなくてよかったと吹っ切れた。
「いやかもしれへんけど、のんちゃんの外見が武器であることは間違いないから上手に使いや」
俺も創設者の孫・社長の息子として好き勝手言われてきたけど言いたいヤツには好きに言わせておけ、持って生まれたものは親だろうが顔だろうが全て武器だと淳太に背中を押された。
「淳太は俺の顔、好き？」
「ん、大好きやで」
「よしっ！」
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作者名：26 | 作成日時：2022年10月21日 0時
