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ゆっくりと意識が現実に引き戻されるなかで流星のしゃべり声が聞こえて業者でも来たんかな?なんて思ってもうひと寝入りしようとしたけど、聞き覚えのある、ずっと聞きたかった声と名前が耳に届いてしまってあかんかった…かと言って会話の内容的に起きるに起きれなくて狸寝入りという選択をしたけど。
「……流星のあほ。淳太困らせんなや。」
流星は涼しい顔で「トモヒロくんはこっちでお兄さんとアイス食べて待ってよか」とともくんを連れてバックヤードに消えていった。
「とも…初対面なのに人見知りせんかったな」
「あ、たしかに。ともくん面喰いなとこあるから…」
「流星くん男前やったもんな」
「……流星にほれちゃった?」
ぎこちないながらぽつりぽつりと会話がつながってきてエンジンが温まってきたタイミングで子どもじみた嫉妬でくちを滑らせてしまい、謝って気まずい沈黙。
「のんちゃん」
「…ん」
「離婚して智洋を引き取るってなった時から、俺はこの子のために生きていく、ただそれだけを考えて突っ走ってきたから恋愛なんて頭になくて…いや、そんな余裕がなかった、のほうが正しいか」
「……」
「やから、のんちゃんに告白されても正直ピンときてなかったんよ……なんで?罰ゲームかな?って」
「っ、」
「ちゃうのはわかってる。ヒモだったって聞いた時は住む世界がちゃう子って思ってたけど一緒に暮らしてみて根っこはまじめで心がきれいな子やってことは俺が近くでみてきたからね」
目を細めてやさしく微笑んで、だからこそ俺の隣に自分は相応しくない、と続けた。
「こんな年の離れたバツあり子持ちのおじさんやなくてもっと若くて綺麗な奥さんとしあわせな家庭を築くべきやと…」
「もし…淳太が俺と同じくらいでバツもなくて子どももおらんかったら…?」
「……」
ボロボロと大粒の涙をながしながらみっともなく縋りつく俺を淳太は困ったように眉をさげて微笑みかけ、のんちゃん聞いて、と紡いだ。
「いやや!聞きたない!」
「のんちゃん、」
「やや…淳太のこと好きやねん…振らんとってよ…」
「誰も振るなんて言うてへんやろ!聞け!」
「ぐえっ」
両手で挟まれて強制的に顔の向きを変えられたと思ったらふにっとくちびるに柔らかい感触──真っ赤な顔した淳太。
「……好き、なんやと、思う…あかん…?」
もう遅い?なんて小首を傾げられて。
「ま、ま、ま、紛らわしいねん!」
ちょっとくらい怒っても怒られへんよな。
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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時