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 テーブルにはお絵描き好きの智洋がプリントの裏やコピー用紙に描いた俺と智洋の絵が何枚も置かれていた。パッと見は子どもらしいタッチが可愛らしく、微笑ましく思えるけれど硬い表情をしたのんちゃんが言いたいことは。

「大学の授業で絵を見れば子どもの心理状態がわかるって聞いたことがあんねんけど…ともくんが描いたふたりは笑ってるけど極端に色が少ない…それにこっちの犬の絵は背景が書かれてるのに淳太くんとともくんの絵は人物だけで真っ白、」

「もうええよ」

「……」

「はあ…ほんま父親失格や…でもな、のんちゃん……智洋と俺の間に距離があることは俺が一番よくわかってんねん。いままで家族を後回しで仕事しかして来なかったツケが回ってきたんや…智洋やって俺よりのんちゃんのほうがええに決まってるわな、あはは」

その先は俺も大学時代に経営学を学ぶなかで心理学をかじった際に幼児心理学として触れてきたから聞かなくてもわかる。そうでなくても自覚があるのだ。

「〜〜〜淳太くんのあほ!全然わかってへん!」

「!?」

「ともくんはええ子やけど聞き分けいいふりしてるだけでほんまは子どもらしくてわがままやし、おしゃべりだって大好きでお仕事をがんばる淳太くんをぼくのパパかっこいいっていつも自慢してくんねん…自分はダメやって卑下してばっかりでともくんから逃げて距離を作ってるのは淳太くんやろ!」

「ちょ、のんちゃん落ち着いて…声大きいわ…」

「小瀧、明日は有給いただきます」

まさかのんちゃんに叱られるとは思ってなくて呆気に取られているうちにのんちゃんは子どもみたいにほっぺたを膨らませて寝室に消えていった。


「のんちゃんは…?」

「のんちゃんは有給で…」

「ゆうきゅう」

「あ、いや、今日はパパで我慢してくれへん?」

朝が苦手なくせに朝食と有給申請書だけ準備して出掛けていったのんちゃん。事由は、淳太くんがともくんが親子になるため。

「……智洋はパパにしてほしいことある?」





「やっと出た…どこ居んの」

『……』

「ていうか有給。まだ2ヶ月しか働いてへんのんちゃんには付与されてへんから無断欠勤になんで。有給ほしかったら最低でも6ヶ月は継続勤務してもらわなあかんから…はよ帰っておいで、ともが待ってる」

『……』

電話の向こうで鼻を啜る音が聞こえて、すぐに玄関のドアが開いた。ずっとアパートの下に居ったらしい。

「……言い過ぎた…ごめんなさぁい…」

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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時

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