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 淳太くん家に転がり込んで2ヶ月。何かあれば腕や洋服を引っ張ったり、頷く、首を振る、首を傾げる…そんな形で意思疎通をとっていたおとなしいともくんも一緒にいる時間が増えたことで俺のことを「のんちゃん」と呼んでくれるになって、ちょっとずつだけど会話での意思疎通が取れるようになってきた。

おかげでわかってきたことが幾つかある。

「ともくん、これだーれ?」

「ともくんとぱぱ」

「上手〜!なぁなぁのんちゃんも描いて!」

「かかなーい、おしまーい」

「のんちゃん仲間はずれで寂しいやん、描いてよぉ」

「もうかかないの」

淳太くんもはまだ先生もともくんを聞き分けのいいお利口さんと言っていて俺もつい最近までそう感じていたけど、ほんまのところはマイペースでわがままな一面があるとみた。そして父親譲りの頑固者。

「きょうね、ほいくえんのうさぎさんがね、うさぎさんのおうちからにげちゃったね、たいへんだったの」

「うさぎさんはどうなったの?」

「はまだてんてぇがつかまえた」

これまた意外なのがおしゃべり好き。保育園ではまだ先生やお友達とおしゃべりすることはあまりないらしいけど、家に帰ってきてから会話の中にはまだ先生とお友達が何回も登場してくる。


「ただいー…まただっこしてもらって…のんちゃんの腕パンパンになってまうから降りや」

「……はぁい」

「いやいやいや!ともくん軽いから大丈夫やで!」

残業して帰ってきた淳太くんに保育園のうさぎさんの話をするつもりが、お疲れなのか少々イラつき気味の淳太くんに出鼻を挫かれたともくんは逃げるようにおもちゃがある部屋に行ってしまった。

「じゅーんたくん!お話いいですかあ?」

「ん? あ、智洋がごめんな」

「それは全然。さっきも言うたけど軽いし…ていうかともくん可愛いからもっと甘えてほしいくらい!」

「のんちゃんが優しいから智洋も懐いてるんやろな」

ともくんを寝かしつけてからひょっこり顔を覗かせると風呂上がりに晩酌をしていた淳太くんが寂しそうに微笑んだ。嗚呼、この親子は揃いも揃ってなんて不器用なんだろうか。

「これ見て」

「……智洋が描いた絵?」

「うん。ともくんと淳太くんやって」

「へえ、上手やな」

「まだまだあんで。保育園のお絵描き帳もともくんと淳太くんがにこにこしてる絵ばっかりやって、はまだ先生言うてたよ」

「……で。のんちゃんは何が言いたいん?」

絵から外れた鋭い視線がこちらに向けられる。

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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時

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