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のんちゃんは非常に有能だった。朝は苦手ながらも朝ごはんは欠かさずつくってくれるし、いつ見ても部屋中ピカピカだから俺と智洋が仕事と保育園に行っている間も掃除・洗濯・そのほか名前のない家事をやってくれているんだろう。綺麗好き。料理上手。智洋にも懐かれてる。愛想も愛嬌もあってご近所つきあいもうまいことこなしてくれてて、嫁だったら100点満点って感じ。嫁なら。
「ちゃーう、俺は淳太くんをお嫁さんにしたいねん」
「うううぅ〜…くるじぃ…」
「ん〜同じシャンプー、コンディショナー、ボディソープ使てるのになーんでこんな匂いちゃうんやろ?」
「のんちゃん…!」
「あと3分だけ!おねがい!あかん…?」
「〜〜〜〜〜〜っ」
生憎本人は旦那希望──智洋が寝たあとだけスキンシップを解禁してほしいと「くーん…」と聞こえてきそうな顔で懇願されてしまい、子どもの頃に実家で飼っていたいぬを思い出してうっかり承諾してしまった。
「……飼い主さんにもこういうことしてたん?」
「え!嫉妬!?淳太くん可愛い〜!」
「ちゃうわ!」
「意地張らなくてもええって。ん〜かわいっ!」
「…………もうええわ」
ソファーに座る俺を横から抱きしめて首筋にすんすん鼻先を擦り付けてくるのんちゃん。承諾してしまった手前されるがままにされてるけど、たまに歯が浮くような小っ恥ずかしい愛の言葉まで囁いてきて、どんな反応をすればいいのかわからないのが目下の悩み。
「可愛すぎるー…可愛すぎてちゅうしたい…」
だけど、キスは付き合ってから、らしい。意外と真面目な一面があるのは一緒に生活していて端々に感じとれた。
「なぁ…そろそろ寝ません?」
「あと3分」
「10秒な」
「いーーーーち、にーーー…」
「長いっ!」
もう3歳になったけど、まだバンザイして寝ている智洋の手をおろして布団をかけ直す。俺、智洋、のんちゃんの順でならんで寝るようになった、そうじゃないと朝でも夜中でも起きた時に智洋が泣くので。
「とも、水族館行くか?」
「すいぞっかん…?」
知り合いに優待券をもらったしげからの誘いに智洋はぽかんとしている──そりゃあそうだ、智洋を休みの日に水族館・動物園・遊園地に連れていったことがなかったから──お魚さんがたくさんいるところと説明をうけて目を輝かせる智洋を見ていたら申し訳なくなった。
「淳太くん。これからでも遅ない。いろんなとこ行こ?」
…ずるいなぁ。
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作者名:26 | 作成日時:2022年10月21日 0時