赤黄22(★) ページ20
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あいつが意外と記念日を大事にするヤツだと知ったのは付き合ってからだったけど、考えてみればあんなまっすぐで愛にあふれた歌を生み出すヤツなんだ、ロマンチストにきまってた──俺も大事にするタイプだから、今年の結婚記念日もプレゼントを用意してあるし、時間があえば外食でもしようかな、なんて思ってたのに。
「いや〜〜〜買った買った!」
しげからこどもたちを実家にあずけてデートにしませんかと誘われた。職業柄デートらしいデートなんて片手で足りるくらいしかしたことなかったから、あえて待ち合わせもしてお家じゃないデートに出掛けた。こどもたちのことは大好きだけどこども不在の買い物はめっちゃ楽やった。
「いうて買うたのせなとこたのもんばっかやん」
「だってあの子たちの服あんま買えへんやんか」
ありがたいことにじじばばとうちのメンバーを筆頭に周りからこどもの洋服をもらうことが多く、それこそ親の俺らが買い与える暇がないからたまに子ども服をみると普段抑えている欲が爆発してしまう。しげの服は3着なのに。
「はよ着せたいな〜…あれ、道ちゃうで」
「〜〜〜♪」
久しぶりのデートを楽しんで息子たちが待っているしげの実家に向かうと思って乗り込んだ車は義実家とはちがう方向に進んでいくが、ハンドルを握るしげに聞いてもノリノリで鼻歌をうたってるだけで答えてくれない。
「おーい、しげぇ、そろそろどこ向かってるかおしえてくれてもいいんちゃう?」
「まあまあ、もうすぐ、ほら──」
「いらっしゃいませ重岡さま、お待ちしておりました」
車から降りてざりざりと石畳のうえを小気味良い音をたてながら、わけもわからずとにかく前をいくしげの背中を追いかけていくと趣きのある旅館と上品な女将と仲居さんが出迎えてくれた。
「へっ」
「たまにはふたりで温泉につかってのんびり、なんて思ったんやけど…どう?」
「……最高」
「へへ、やった。部屋に露天風呂ついてんねん!」
しげが俺に内緒で準備してくれたのだ、宿泊代を調べるなんて野暮なことはしないけれど建物の外装と内装、客室、従業員の接客、そして運ばれてきた食事…何もかもからグレードの高さが窺える。
「うひょー!うまそう!」
「それなのにおまえは…」
ひと足先に大きな露天風呂で汗をながしてきたしげはテーブルを埋め尽くす彩り豊かな食事に子どもみたいな反応──羽織りを来た浴衣姿が色っぽくてちょっとときめいたの返してくれ。
20240322
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作者名:26 | 作成日時:2022年12月24日 0時