《漆》 望むは金。

261.5 ページ4

.




「明日」が待ち遠しくて、いまこうしてる間にも「明日」が近づいてくることに、こんなにドキドキする。

本当に楽しみなの。だって、





「っ、……ねえ、この音…やっぱりAちゃんって俺のこと、」


『鬼殺隊に入ってから、怪我以外で休める時もそんなにないし、基本は昼夜逆転の生活だし、
…思えば出掛けられる時間なんて殆ど、いえまったく！！ 無かったもの！』


「……ん？？」


『せっかく自分でお金を稼げるようになったのに、使える機会が少なくて…でも明日やっと…ああぁ〜〜っ楽しみぃ〜♡♡』





そう！ 散財っっ！！！！！！！！

待ちに待った散財が出来るわ！！ はじめて自分で稼いだお金で、好きなものを好きなだけ買う！！
夢にまでみたことが、ついに明日起きる。なんて素敵。人生捨てたもんじゃない。






「………………………………………………」


『あ、……そういえば善逸くん、さっきなんか言いかけてなかった？ ごめんね、なあに？』


「…………。Aちゃんは、」


『？？？ うん』




善逸くんが顔を両手で覆って、俯いている。
絞り出すような声で名前を呼ばれて、首を傾げながら返事をした。




「…Aちゃんは、………金が本当に好きだねぇ……っ」

『うんっ！！ ……………？』




何を今更、と言えばそれまでだけど、お金が好きな気持ちは本当に本当だから、勢いよく頷く。

だけど、対照的に善逸くんの声には覇気がなかった。
さっきまで私と一緒に嬉しそうに微笑んでいたというのに。どうして。どこから。





『な、なんで落ち込んでるの…？？ 私なんかしちゃった…？？』

「あー…いや、Aちゃんは悪くないよ……俺が、俺が金に勝てないから…」

『何言ってんの？？？？？』





…？？？ なんかまた善逸くんがおかしくなってる。

意味のわからない言葉に引っかかって意味を尋ねるけど、善逸くんは力なく首を横に振るだけで、教えてくれはしなかった。












■

262.→←261.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す