Vacation : 60 ページ10
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恋ではない。
だけど彼が私にとって他とは違うトクベツな生徒であることには変わりなくて。
毎日毎日保健室に来ては私を楽しませてくれる、そんな彼が可愛くて仕方なかった。
あの日、去り際に彼はこう言った。
「俺にとって先生は、いつまでも織部先生やから」
そのときにはわからなかったその言葉の意味が、今になってよくわかる。
彼は彼なりの、終わりを言いたかったんだろう
私はそこに優しさを感じた。
夏が終わって、彼が女の子と楽しそうに帰っている姿を私達の出会いの場所から見つければ
あれが本当の恋だ、ああいうのを純愛っていうんだ
そう感じた。
彼が私に好意を寄せていることにも気づいていた、それでも私は彼を拒否しようとしなかった。
彼との時間を、本当の彼との時間のように過ごしたのは
きっと。
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「…本当に、俺でいいの?」
もう移動する、そんなときに彼が不安そうに私に尋ねる。
「今から私達夫婦になるのよ?
今更そんなこと言ってどうするの」
彼はだって…と俯く
「俺、あんなに優のこと不安にさせたんだ
仕事が忙しくてなかなか会えなくて、優のことなんてそっちのけにしてしまった。
なのに焦ってプロポーズなんかして……
逃げるなら今だよ、優。」
そうだよ、沢山私のこと不安にさせた
寂しくて寂しくて毎日が平凡だった
「大丈夫よ、あのとき私を楽しませてくれた人がいるから」
''さあ、行きましょう''
私の声で彼は安心した顔を見せる
私を前向きにしてくれたのは、あのときあの時間を過ごした''彼''のおかげ。
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作者名:リ ン | 作成日時:2018年4月15日 21時