Vacation : 56 ページ6
＊＊
「うん！よし！！完璧！」
芹夏の家にお邪魔させてもらって、花火大会に備える私。
メイクに髪型に何から何までやってもらって、いざ鏡を見ると別人のような私がうつる。
「ねえ芹夏…こんな大人っぽい浴衣似合わないよ」
私が持っていたのは淡いピンク色の浴衣で、当然私はそれを着るつもりだったんだけど
''最後押すんだったら絶対大人っぽいほうがいい！''
って言うから、私は芹夏の持ってた黒の浴衣を着ることになった。
「大丈夫、元がいいから何着てもかわいいって！」
「そんなこと言われても……」
一応仮にも振られてるんだし。
ただ花火大会に誘われたからって舞い上がってる自分が馬鹿馬鹿しく思えてきて一気に心が冷める。
そんな私の表情を悟ったのか
浴衣を着せる手を止める芹夏。
''あのね、''とゆっくりと唇を開く。
「私は怜央くんに振られたわけじゃん？
でもどうしても怜央くんじゃなきゃダメで、どうしても好きで、それでしかなかった。」
知ってるよ、だってがんばってたもんね
「恋愛ばっかに夢中になるなんて時間の無駄だよ、正直。でもそれでも、その時間でさえも愛おしかった」
それに、怜央くん可愛い浴衣着てきて！って言ってたし！
私がAの浴衣着るね！
なんて笑って。
浴衣を着せるのを再開したその手は暖かくて。
やっぱり芹夏はお金じゃ買えない、大切な大切な友達だと思った。
「行っておいで」
彼女の言葉に、何度救われたんだろう。
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作者名：リ ン | 作成日時：2018年4月15日 21時
