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「 どこ行ってたの、もふ 」
「 ……ちょっと、色々あって。なにから話せばいいのか、分からないんだけど 」
とりあえず、お互い座ろっか そう言ってリビングへと移動するもふとそれについていく私。テーブルに目をやると、珍しく用意されているもふの料理。それを見て、少し泣きそうになってしまったが、ぐっ と堪える。
「 あのね、今からぼくが言うこと、びっくりしないでね 」
「 ―――ぼく、実はまふなんだよ」
もふのそんな言葉に、え? なんて間抜けな声を出してしまう私。……何言っているんだ、もふは。自分の名前を間違えた?いやいやまさかそんな、でもだとしたらなんでまふの名前を知って、いや待ってもふがまふ?ああもう意味が分からない。てかそんな事言われても信じられる訳ない。だってまふは、……まふは、私が仕事から帰った後に、亡くなっていて。
「 ……ごめん、いきなりこんな事言われても困惑するよね。でも、本当なんだよ、その証拠にほら、見てここ 」
そう言って腕を見せてくるもふ。そこには何やら傷跡があって。
「 これ、覚えてる?まふの時、ガラスの破片が前足に刺さって、傷できちゃった時のやつ 」
「 …!あの時の? 」
「 そう。だからぼくはAちゃんの名前も、食器の位置とかも分かってたからここに来て早々ご飯を作ることもできたんだよ 」
確かに、そう言われてみれば全てが合う。その腕にある傷も、私の名前を知っていたことも、食器の位置など知っていたことも、全て。
「 ……じゃあ、本当にまふなの? 」
「 うん、そうだよ 」
信じられない、亡くなったと思っていたまふとまた出逢えて、そして話しているなんて。
「 それでね、あともう1つ話があって 」
「 うん 」
「 ぼく、そろそろしぬんだよね 」
まふのそんな言葉に、私はまた間抜けな声を出すことしかできなかった。
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アヤ(プロフ) - 全私が泣いたよぉ、良かったねぇ泣 (10月13日 20時) (レス) @page13 id: 987acf395e (このIDを非表示/違反報告)
ソウル・ハート - 面白かったです。初コメでした! (2023年4月8日 0時) (レス) @page14 id: de10e37100 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高瀬その | 作成日時:2022年2月17日 1時