【歌い手短編集】平成最後の夏は君と！ (ページ23)

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『私、責められる筋合いなんてないから』

　どうして、こんなにも可愛げのない言い方をしてしまうのか。その私の言葉に不服そうな顔をするセンラにも、私にも嫌気がさす。

　『……あー！もうっ！センラが悪いんでしょ！？可愛い女の子たちにナンパされちゃって！満更でもなかったんじゃないの！？』

　と、感情の赴くままに、つい口走ってしまった。感情が高ぶってしまって、目尻に涙が浮かぶ。ぼやけた視界に、愛おしそうに笑ってこちらを見つめるセンラが見えて、自分の目を疑った。

　｢なんや、そんな事か｣

　『そんな事って……！』

　私にとっては重要なことをそんなこと扱いされ、怒りで思わず睨む。すると、伸びてくる手に頭を撫でられた。

　｢ごめんな。不安にさせてしまって｣

　別に、A以外にくっつかれても嬉しくないから、と彼は言う。

　｢でも、志麻くんと仲良さげに話してたのはいけ好かんなぁ｣

　何、自分のことを棚にあげちゃって。と言おうと思ったが、ここで言ったら喧嘩になってしまいそうで口を噤む。

　｢────志麻くんって、かっこいいやん？｣

　突然、センラのそんな不安そうな声が聞こえて、不思議に思って何も言わずに彼を見つめる。

　｢だから、さ。不安なんよ、センラも。Aが志麻くんを好きになってしまいそうで｣

　その言葉を聞いて、少しびっくりした。彼は自分でも言うくらいの自信家だ。だから、不安なことなどないと思っていた。だから、そんな彼の新しい一面が知れたようで、思わず頬が緩んだ。そして、可愛いな、なんて思いながら、裏腹の言葉を発した。

　『うかうかしてると、志麻くんの所に行っちゃうかもね』

　きっと、私たちはこれでいいのだ。時に、素直になってお互いの気持ちを伝えさえすれば、常に素直じゃなくなって何の問題もない。なんて、考えながら、かき氷に目を向けると、それはとっくに溶けきっていた。
　
　
　
　
　
　