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「……やっぱ、原因ってあれやんな?」





 その声を聞いて、また彼を見ると、少し遠くにいる──また新しい人に絡まれてる──センラの姿を指さしている。








 『しょうがないよ、センラはかっこいいから』





 しょうがない、と半ば自分に言い聞かせるような言葉に、なんだか情けなくて。乾いた笑みが零れた。すると、志麻くんはなんだか悲しげに笑った。




 「俺やったら、そんな思いさせへんけどな」





 そう言葉紡いだ彼に、驚きすぎて、息をするのさえ忘れていた。その、真剣な顔と、吸い込まれそうな瞳。





 「なーんて……」



 にぱっ、と笑って言いかけた彼は、突然言葉を止めた。そして、どんどん青ざめていくその表情。不思議に思って彼の目線の先である私の後ろを見るために振り返った。






 『せ、センラ……』




 そこには目は笑ってない笑顔を浮かべ、その雰囲気にそぐわない、かき氷を持ったセンラが立っていた。






 「───あっ、俺、坂田に飲み物買ってきてって頼まれてたんやったわ」




 じゃあな、と焦ったように早口で捲し立てて、嵐のように去っていった彼に呆気に取られながら軽く手を振る。




 「A」



 突然、名前を呼ばれた。いつもの声より心做しか低めな声。それに肩が跳ねる。
 

 『お、おかえり。センラ』




 あはは、と乾いた笑みに引き攣った表情を浮かべているのが自分でもわかる。




 「何、話してたん?」



 そう言いながらずかずかと私に近寄ってくるセンラに恐怖を感じる。そして、体が勝手に逃げようとして、腰を上げ、立ち上がろうとした時、手を引っ張られ無理やり立たせられた。そして、ラッシュガードを羽織っている彼に抱きしめられる。



 「ねぇ、聞いてるんやけど?」




 耳元に口を寄せて言うその行動は、無意識なのか、故意的なのか。いや、後者に決まってる。故意的だから、確信犯だから、こんなにも胸が高鳴ってしまうのだ。




 『何って、別に』



 なんて答えていいか分からなくて、顔を逸らしながら、浮かんだ言葉を紡ぎ、彼の胸元を押し返した。




 「別に、って言う割には随分親密そうやったな?」





 ─────何故、




 何故、私たちはこんな風に回りくどい言い方しかできないのか。何故、相手の求めている答えを分かっていて、答えないのか。









*

*→←かき氷。



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作者名:高瀬その | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/  
作成日時:2018年6月26日 21時

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