＊ ページ37
.
ずっと遠くを眺めていれば、
海はもう足元まで近づいていた。
「…もっと、頼ってくれたら、よかったのに」
彼女の両親から電話をもらったとき何かを悟った
だって涙声で、言うんだ
娘を今までありがとう、Aは
あなたに愛されて、幸せでしたよ
、と。
ろくに返事もせずにうずくまってしまったのを
酷く覚えている。
「…ｯ、A」
きみがいないこの世界で何を想えばいいの、
何を大切にして、何を愛せばいいの。
あの日きみが泣いた辛さを半分こしよう、
だから、だから戻っておいでよ、
そしたら僕が、何からも守り抜くから。
２本の彼岸花を、海に流した。
流れに流され、流れていく花は
彼女に届くのだろうか。
眩しい夕焼けに目を細め、
ただひたすらに涙を溢した。
「…ｯ、あ、れ…？」
きら、光るものに身体が焦った
あの日、あのとき、きみが___
「…ｯこれ、って…、っ」
確かにあの日海に投げられた指輪、
流れる花と引き換えかのように、
彼女からの返事かのように、
僕の元へ戻ってきた。
「…っ、ぅ…ｯ…A…っ、」
指輪を握りしめ、もう一度きみを呼んだ。
「…っ、…愛してるよ、」
花は、見えなくなっていた。
きみが受け取ってくれたなら、それでいい。
僕は
最後まできみは、綺麗だった。
end.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：高瀬その | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2018年6月26日 21時
