アルファベットで恋をして Ⅱ (ページ3)

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購買から戻ってくる廊下で、何故か大量のプリントを抱えているAが視界に映った。

どうせ担任にでも頼まれて、断りきれずにやらされているんだろう。

手伝おうと足を踏み出したら、そんな俺より先に彼女の隣に並んだソイツ。……フクダ、とかいうあの後輩だ。

人の良さそうな爽やかな笑顔を浮かべて、手伝いますよ！なんて口にしていて。

荷物を受け取った時、偶然Aの手に触れたらしく、顔を赤くしていた。

……偶然。偶然だから、仕方ないだろ。そう思いつつ、足は止まらない。

「わ……拓弥くん？ちょ……！」

驚くAの腕を引いて、近くにあった教材室に潜り込んだ。

「えと……たくやくん……？」

不安げに揺れる瞳と、俺の機嫌を伺うような声色。

小さな身体を腕の中に閉じ込めると、最初は戸惑っていたようだけど、すぐに背中に手が回った。

日に日に膨らんでいく愛情は、縮むことを知らなくて。

いつか彼女を押しつぶしてしまうんじゃないか。怖くなって、誤魔化すように彼女を抱きしめて。甘い香りと温もりに酔いしれて、逃げてばかり。

結局おれは、何も変わろうとしていない。

「……Aはさ、誰の彼女？」

「え……？」

「……俺の、でしょ？」

ああ、痒い。痒くてたまらない。

こんな台詞、昔の俺だったら絶対に言わなかったのに。

腕の中の彼女が小さく笑ったのを感じて、余計に恥ずかしくなった。