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「あっち、行こっか」
「うん」
拓弥くんの言葉に腰を上げる。
花火がよく見える場所まで行くつもりなのであろう。
また先を歩いていってしまう彼を追いかけるんだけど。
花火の打ち上げが始まる時刻が近づいていることもあり、人はさっきより格段に増えていて。
人混みに流されてはぐれそうになり、咄嗟に彼の浴衣の袖を掴んだ。
「あ……」
「ご、ごめん。……嫌だった？」
「いや、そうじゃなくて」
小指から順番に絡めとるように手を繋いだ拓弥くん。
「……気付かなくて、ごめん」
目を逸らして俯いた彼に首を振って、その手を握り返した。
いくら何でも人が多すぎる。
見渡しても人の頭ばかり。
花火どころじゃない。
苦笑いを浮かべた拓弥くんと共に、少し石段を上がったところまでやって来た。
「足、痛くない？」
「うん。平気だよ」
私のペースに合わせてくれる彼のおかげで、慣れない下駄を履いていても、辛いと感じることはなかった。
「人、いっぱいだね」
「去年より増えた気がする」
「……去年も来たの？」
「あー、うん。毎年海たちと来てた」
彼女と来てたわけじゃないんだ、なんて変なところで安心した自分が恥ずかしい。
今年は、私と来てくれた。でもお友達との付き合いを邪魔してしまったような気もして申し訳ない。
「Aは？」
「え？」
「去年。花火大会、来た？」
「あー……ううん」
「そう」
「あ、でも。小さい頃にお母さんが連れてきてくれたのは覚えてるよ」
花火も縁日もプールも。連れてきてくれたのは、いつもお母さんだった。
実は去年、友達に一緒に花火大会へ行こうと誘われたりもしていた。でも、そんな誘いを私は断ってしまった。
……花火大会の夜、お母さんがいつも仕事を早く切り上げて帰ってきてくれていたことを知っていたから。
家の狭いベランダから見る花火。遠くて小さいけれど、いつまでも変わらないそれが私にとっての幸せだった。
だから今年、拓弥くんと花火を見に行くことになって嬉しかったんだけど、お母さんにはちょっと伝え辛くて。
……でも。そんな私の心配は全くもって不要だったらしい。
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ちよこ(プロフ) - 草村 みゆさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、書いていてよかったなあと思えます(; ;) 嬉しいです(; ;) 気まぐれな更新が続くかと思われますが、今後ともお付き合いくださると嬉しいです！ (2017年10月9日 23時) (
レス) id: 96b79ece7b (このIDを非表示/違反報告)
草村 みゆ(プロフ) - この話すごく好きです！ 続きも楽しみにしてます＼(^o^)／ (2017年10月1日 17時) (レス) id: d19d8cf885 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちよこ | 作成日時：2017年8月16日 19時
