ミルクティー【青】

三十二話 ページ32

ころんside


ころん「Aおはよ！」

『ころん！ おはよう』


また、いつもと変わらぬ朝。

僕はいつも通り、Aと一緒に登校する。


ころん「だいぶ冷えてきたねー」

『そうだねー…もう冬だしね…』


そう言いながら、Aは自分の両手を擦り合わせていた。


うん、可愛いね…じゃなかった、寒いもんね。


ころん「………」


そこでふと、あることを思いついた。


これは手を繋ぐチャンスになるのでは、と。


寒いからって口実で手繋げば良いでしょ。うん。


ころん「あー…A、今日寒いよね」

『？ うん、そうだね』

ころん「だよね？ …だからさぁ、…手、…繋がない…？」


僕がそう言うと、Aは一瞬目を見開いて、

ふっ、と柔らかく笑った。


『ふふ、何急に。…いいよ？ 手、繋ごうか』


はい、と手を差し伸べるA。嫌がられていないようで一安心。


…安心した、けど…


なんだか、急に恥ずかしくなった。


いや、すっごい今更だと思うけどさ、なんか、ほら。


本人の許可を改めて得ると、なんか…緊張する。


情けないなぁ、と思いつつ、恐る恐るAの手を握った。


繋いだAの手は、びっくりするほど冷たくて。


思わず、「うわ」と声を上げた。


ころん「A、手冷た…もしかして冷え性？」

『うーん…どうだろう』


Aは首を傾げて、曖昧な返事をした。


いや、流石にこれは冷たすぎる。なんなら今の気温より冷たい。絶対冷え性。


僕は手を握る力を少し強めた。


『いたた、ころん、力強い』

ころん「…あ、ごめん」


もー…と少し頬を膨らませるA。

可愛いと思った。けど…


それと共に、ものすごく不安と嫉妬心に襲われた。
他の奴にもそういうのをしてるのかなぁ、と。


Aは僕と違って、愛嬌があるから、僕以外にも仲がいい人が沢山いる。もちろん、その中に男だって含まれている。


僕はその中で一番らしいから、今もこうしてAの隣にいる事ができる。
それは嬉しい。…嬉しいけど、こんなに可愛いAを他の男と一緒にいさせるのが嫌だ。


もし、そいつがAを好きになったら？
Aがそいつを好きになったら？


…Aは可愛いから、きっとAに惚れる男は多いんだろう。


Aは人への接し方が平等だから、僕以外にもきっと、こんなに可愛い笑顔を沢山の男に見られているんだろう。


…嫌だ、そんなの嫌だ


僕だけがいい、僕以外の男に、そんな笑顔見せないで…

三十三話→←三十一話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す