その愛、雨模様。

背信の模様です。(knmc)☆ ページ8

放課後、帰りたくないなと思いながら荷物を纏めていると、鞄の上に人の影が掛かる。
上を向くと、案の定それは剣持だった。
『剣持、ノートなら明日返すよ』
急かしに来たのかと思ってそう言うと、目の前のこいつはいやと首を振る。
｢今日はAと一緒に帰ろうと思いまして｣
『..え』
嬉しいけどなんで？
私の口から疑問符が飛び出そうになった時、私より先に剣持が答えを出した。

｢ストーカー、心配なんでしょ？｣

それは、せこい。
熱くなった頬を隠すように、私は急いで残りの荷物を纏めた。

＿
『ありがとね』
下駄箱への階段を下りながら剣持にお礼を言う。彼の答えを待っていると、剣持は私と同じように此方を見ずに答えた。
｢いえ、Aの事が心配だったので｣
なんだこいつ、甘すぎないか。
驚きで思わず剣持の方を向いてしまった顔を急いで前へ戻す。気付かれないように、悟られないように。それを目標に今までこいつの隣に並んできたというのに、そんな事されたらバレてしまうじゃないか。
頬がまた熱くて、今日何回目なんだと半ば呆れながら下駄箱への道を早歩きで歩く。
そのまま自分の下駄箱の扉を開けると、思わず心臓が止まりそうになった。

手紙が、入ってる。

少し厚めの、白い封筒に入った手紙。
震えた手でそれを持ちながら、もしかすればストーカー以外の人物から出された物かもしれないと差出人を確認する。だが、まるで私の希望を打ち砕くかの様に、封筒には私の名前が綺麗な字で書いてある以外何も書いていなかった。

私の予想は、恐らく当たってしまっている。
怖くてその場に立ち止まっていると、もう靴を履き替えた剣持が心配そうに声を掛けてきた。
｢どうかしたんですか？｣
依然として足を動かせない私がゆっくりと剣持の方を向くと、彼も恐怖の種に気付いた様だった。
｢..貸して下さい｣
そう言って私の手から手紙を奪い取ると、剣持は封筒を破って手紙の内容を読み出す。
だがその時間は手紙の量に比例する事なく直ぐに終わり、彼はそのまま手紙を鞄の中にしまった。
｢Aは読まない方が良いです｣
これは僕が預かっておきますから、そう言って優しい手つきで私の頭を撫でる剣持。
｢安心して下さい、僕が護りますから｣
『....うん』

ふと、本当にふと思ってしまったんだ。
さっきの手紙と、剣持から貸してもらったノートの字がよく似ていると。

...きのせい、だよね

何も考えなかった事にして、私は靴を履き替えた。

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