簒奪の模様です。(hks)☆ ページ37
『んっふふ〜ん』
いつもの三倍上機嫌な私は、ある人を探して廊下をきょろきょろと見渡す。
そして階段を上ろうとしているお目当ての友人の姿を見つけると、元気よく走り出してその背中に飛びついた。
『ふゆきーーー!』
「わっ」
私の登場を全く予想していなかったのか、肩を震わせて驚く冬雪。
もー、と私を怒ろうとした彼女を遮り話し出す。冬雪には、一番最初に伝えたかった。
『聞いて!私ね、彼氏出来たの!』
「へぇぇ、あ、そうなんだ」
あれ?なんか、予想以上に反応が薄いぞ..?
てっきりもっと喜んでくれると思ったのだが、その予想に反して歯切れの悪い冬雪を不思議に思い、彼女の可愛らしい顔を覗き込む。
「どの人?」
私の視線に気付いた冬雪は何処か生気のない目で聞いてくる。先程から彼女の態度への疑問が募るが、今は彼氏を見せるが最優先だ。
スマホの写真フォルダを開いて冬雪にツーショットを見せると、彼女はおおと声を上げた。
「なるほど、これがAの彼氏さんか〜」
かっこいいね、と呟く冬雪。自分の彼氏を褒められるとやっぱり嬉しいもので、私は口角が上がるのを感じた。
放課後。彼氏と帰ろうと教室で宿題をしていると、足音が聞こえて来た。もう来たのかと時計を見てみるが、どう考えたって早すぎる。じゃあ誰だろう、と考えた時に音を立てて扉が開いた。
『あれ?冬雪じゃん。どしたの?』
何処か焦点の合っていない瞳を私に向ける冬雪は、にこりと口元を歪ませた。そしてその唇を動かして言う。
「Aにね、渡したいものがあるの」
『..なに?どんなの?』
普段勘が鈍いと言われる私だけど、今の冬雪から漂ってきている異常感は流石に分かる。警戒した私は何時でも逃げ出せるようにそっと椅子から立ち上がり、荷物をまとめるふりをしようと鞄に手を置いた。
「実はね」
緊張が更に高まる。そして私の顎から汗が1粒落ちた時、冬雪はぱっといつもの可愛らしい笑顔に戻って言った。
「Aの為に、新作のジュース買ってきました〜!」
いえーい、と何処かのパーティみたいなテンションで私にジュースを差し出す冬雪。..え、何そんな事?
「私もさっき飲んでみたんだけどめちゃめちゃ美味しくてさ〜」
早く飲んでと言わんばかりの冬雪に、私は拍子抜けしながら有難くジュースを飲む。
_そして、倒れ込んだ。
『ふ、ゆき..?』
「やっぱりこの薬は効き目がいいなぁ。..ふふ、おやすみ、A」
冬雪の声が、暗闇の中で響いてる気がした。
簒奪の模様です。(hks)☆→←齟齬の模様です。(szk)☆
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みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - むさん» ありがとうございます…!!!泣私自身ヤンデレ大好きなのでこれからも書き続けます!応援ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - Oh…Kamoto…さん» 岡本さんん!!!!その節は本当にすみません…でもそう言って頂けて良かったです(安心)応援ありがとうございます! (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - レーヴァテインさん» 新しい短編収穫の方にもコメント下さっていましたよね?!ありがとうございます…!!そう言って頂けると嬉しいです!ありがとうございます (2021年11月18日 19時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
む - segs凄くいいです…。ヤンデレモノだいすきなので沢山書いてくださると私が喜びます♡これからも応援させていただきます! (2021年10月19日 22時) (レス) @page47 id: 0f73c4f562 (このIDを非表示/違反報告)
Oh…Kamoto… - 初コメ失礼致します。こんにちは!ガチの岡本です!あみゃみゃに殺されるならもはや本望でもあるので大丈夫です☆これからも応援してます!!! (2021年10月16日 23時) (レス) @page11 id: 0d243bf87d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時:2021年1月6日 17時