10.人外の中の人外の到来 ページ10
「有名になりたいかい？」
不意に聞こえたその声に俺は思わずぎょっとした。魔力感知を常時発動させている俺は人間よりも視野が広いはずなのに、その訪問者に俺は気付くことが出来なかった。
まるでたった今、ここに現れたみたいに。
「…社長」
「社長？！」
部屋のドアに凭れるようにしてそこに現れたのは、一人の女だ。長い髪をリボンで纏めた彼女はまだ若く、スーツ姿がやや不釣り合いに見える。
しかし彼女の浮かべる笑みにそんな可愛げはなく、どこか不敵なニュアンスが読み取れた。…彼女こそが、我社の社長である。
俺の呟きに司は声を上げて驚き、クロノワの二人も嗚咽混じりでも目を丸くして彼女を見上げた。
彼女はにっこり笑みを浮かべ、恭しくお辞儀をする。妙にその仕草が様になっていて、彼らの緊張を煽っていた。
「初めまして、僕は安心院なじみ。この会社の社長…まあ尤も、代理のようなものだけどね。」
「どうしたんですか？わざわざ俺の部屋まで」
「ふふふ。君が何かを求めている気配がしたからね」
何を察知してそれを把握したんだよ、と思わず呆れた。嘘をついているわけではないだろうけど、彼女の言葉は含みや遊びが多すぎてその真意を掴むことは困難だ。
彼女は靴を脱いでカーペットの上に上がり、ちょん、と俺達に向き合って正座する。
「端的に言えば、彼らの為に君が出来ることはなんだろう、という話だよね？」
「端的に言われると正直情緒も何もないんですけど…まあ。」
「でも出来ることはなんだってしたいだろう？」
「…まあ…」
だからその明け透けで赤裸々な物言いはちょっと恥ずかしいからやめてくれ…含みを持たせたり持たせなかったりなんなんだよ…。
三人の視線を感じたけど恥ずかしくて目を合わせられなかった。ごめん。
≠
「はい、ココア。」
「す、すんません…ありがとうございます」
「そんな畏まらなくていいんだよ。僕は元々こういう仕事のほうが好きなんだ」
「社長なのに？」
「向いてないからって君がやらせたんだろ？」
「言い方。俺に腹の探り合いが向いてないっていうのは社長がそう指摘したんじゃないですか」
ぴっ、と彼女が人差し指を立てる。
彼女の雰囲気が尖って思わず口を閉じると、彼女はそのままぷに、と俺に指先を押し付けた。
「なじみ。君にはそう呼ぶことを許したはずだ」
「…社長のことをそう呼ぶわけには」
「社長ごっこはもう飽きた」
彼女は静かにそう呟いた。
11.幸せに出来るなら安いもんか。→←09.でも、泣かせるつもりはなかった。
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麗奈 - 安心院さんだー？！みんなかわいい…。更新応援してます！ (2021年3月14日 16時) (
レス) id: 88febc3d1c (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - え、好きです…！更新されるのを楽しみに待ってます。 (2021年3月13日 12時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
少女A - この作品まじで好きです(突然の告白)更新頑張って下さい!!!! (2021年2月11日 21時) (レス) id: d50aeb0ee5 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - この作品大好きです！ (2021年1月5日 15時) (レス) id: 47378f0ea6 (このIDを非表示/違反報告)
らんか - 今回もめっちゃ良かったなぁ〜！！！アッキーナかわいいwずっと更新されてないかな？って気にしちゃうw (2021年1月2日 23時) (レス) id: 318e0b9fd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リム | 作成日時：2020年12月24日 14時
