09.でも、泣かせるつもりはなかった。 ページ9
いつものようにふんふんふん、と鼻歌を歌いながら自室に入ると、そこには何故か既に司とクロノワコンビがいた。
泣きそうな顔をしている二人に思わず驚き、叶と目が合ったかと思うと彼の目からぼろりと涙が零れてぎょっとした。
「どっ、どうした?!誰かに何かされたのか?!」
「Aさん…」
「えーと、タオルタオル…うごっ?!」
「…ふぐ、ゔううっ…!」
ぎゅう、と叶に抱き込まれて絶句した。ぼろぼろ涙が溢れて涙粒が俺に落ちてきて表面を滑り落ちる。
「ま、待て待て待て!まだタオルが取れてない!」
「や゙だ!!」
「うお、」
「なんでよぉ、俺達のことも可愛がってよぉ…っ」
「…司、これどういうこと?」
「……あんたの他人行儀が嫌だったんだと」
「…あー…その、ごめん。」
気付いてはいたんだ、あの瞬間に二人が傷付いていたこと。だけど俺が馴れ馴れしくすることを嫌がるファンは確かに一定数いて、その内二人へ矛先が向くかもしれないと思った。
俺はその状況を見て見ぬふりできなかった。だから距離を置いた。…つまり、それが二人を傷付けたのだ。俺は二人を守りたかったのに。
ちらと葛葉の様子を窺うと、彼もぽたぽたと泣いていた。ああ、くそ。そんな顔をさせたかったわけじゃない。
「…なあ、俺の話を聞いてくれるか?」
「…うん。」
叶の目元を拭って問い掛けると、彼は素直に頷いてくれた。葛葉を呼べば彼は彼で応じて傍まで来てくれる。司が二人分のタオルを用意してくれた。
俺はぽいんとローテーブルの上に乗り、彼らと目線を合わせる。
「まず誤解されたくないから言うが、俺はお前達のことだって愛してるよ。」
「…ん。」
「…でも、お前達のことを泣かせたってことは俺の選択は間違ってたんだろう。ごめんな」
「…謝らせたいわけじゃない。こんなの俺達の我儘だって、分かってるよ」
「我儘に応えてやるのも俺の愛情表現だ。そんなつれないこと言うなよ、葛葉」
「………」
「俺がお前達と距離を取ったのは、お前達のファンからの反感を買うことを避ける為だった。無視をすればいずれお前達に矛先が向くと思った」
「…Aさん…。」
「…少し考えれば分かることだった。反感を避けたいなら俺は有名になる努力をするべきだったんだ」
そうしたら反感を買うことも避けられた。二人を泣かせることもなかった。やっぱり俺は判断を間違えていたんだ。
でも俺に一体何が出来るだろう。
10.人外の中の人外の到来→←08.ごめんな、お前達の為なんだ。
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麗奈 - 安心院さんだー?!みんなかわいい…。更新応援してます! (2021年3月14日 16時) (レス) id: 88febc3d1c (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - え、好きです…!更新されるのを楽しみに待ってます。 (2021年3月13日 12時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
少女A - この作品まじで好きです(突然の告白)更新頑張って下さい!!!! (2021年2月11日 21時) (レス) id: d50aeb0ee5 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - この作品大好きです! (2021年1月5日 15時) (レス) id: 47378f0ea6 (このIDを非表示/違反報告)
らんか - 今回もめっちゃ良かったなぁ〜!!!アッキーナかわいいwずっと更新されてないかな?って気にしちゃうw (2021年1月2日 23時) (レス) id: 318e0b9fd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リム | 作成日時:2020年12月24日 14時