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「メールの件、確認しました」
「あぁ、きちんと届いたようで良かったです。いかがでしょう、参加していただけますか?」
「参加したい、とは、思うんですけど……あの、少し、聞きたいことがあって。お時間は大丈夫ですか」
「はい!どうぞ、遠慮なく仰ってください」
優しく促してくれるマネージャーさんはやはり凄まじくいいひとである。
せっかく質問していいと言われたのだから活用しないと勿体ない。タオルを肩にひっかけ、バッグからイヤホンを取り出して接続する。
そのまま画面を耳から離してメモ機能を開いた。
「出来れば、出演した時の大まかな流れとか、分かるようなら教えていただきたくて。あ、あと、共演者の方がいるなら、それも」
「分かりました。大まかな流れは、そうですね。コーナーは企画の合間に三回、それぞれ十分ずつを予定しています。一回目でラインナップを、その残り時間と後の二回でひとつずつ、望月さんたちが気になった商品をピックアップして紹介していただきたいと思っています」
「それ、って、アドリブってことですよね」
「そうなります。もちろん、MC用の台本はご用意させていただきますし、商品の詳細につきましてもお伝えしますが。……私は、望月さんであれば対応力もありますし、大丈夫だろうと思っていますよ」
率直な意見で褒められて言葉につまる。いつになったって、こういうのには慣れそうにない。それでも、余計なことは言わずにただ素直に感謝だけ述べた。
謙虚もすぎると美徳にならない。最近散々学んでいる。
「それから、共演者の方ですが、今黛さんにお声かけしているところです。ご存知でした?お二人のコラボ配信、どれもかなり好評なんですよ」
「そう、なんですね。確かに、見てもらえてるなぁとは思ってたんですけど」
でもそうか、黛さんが一緒なら安心感も大きい。彼の語彙や知識の豊富さは、リスナーだったこともあるしよく知っている。いや、まだ彼が頷くと決まったわけじゃないけど。でも、私の心は決まった。
「ぜひ、参加させてください」
「ありがとうございます!それじゃあ、そのように準備しますね。後日また正式な書類をお送りします」
「はい、お願いします」
失礼致します、とマネージャーさんが声をかけて、ぷつりと通話が途切れる。
まだ始まってもいないのに、心臓がばっくばくだ。もうひと仕事終えた気分。
思わず深く息を吐いて、そのまま、ずるずると床に座り込んだ。
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凡(プロフ) - はじめまして!!この作品が大好きで何度も何度も読み返しています。これからも活動応援しています! (2021年8月19日 16時) (レス) id: b829afb215 (このIDを非表示/違反報告)
莉紬(プロフ) - りあさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。細かいところまで気にしていただいて、丁寧にかいた甲斐がありました。ぜひ、今後もお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年6月30日 13時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
りあ - 一気読みしました、、、!とても好きです…!作中にサンダーソニアが出てきたときは思わず声を出してしまいました…!! (2021年6月29日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
律(プロフ) - 神さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。そう言って頂けますととても励みになります。ぜひ、最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年5月11日 22時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
神(プロフ) - はじめまして。数日前にこの小説を見かけ、読ませていただいたところ本当に面白くて一気に読んでしまいました。差し出がましくて申し訳ないですが、これからも更新を応援しております。 (2021年5月11日 21時) (レス) id: bf2877755d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:律 | 作成日時:2021年5月5日 0時