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思っていたより真剣そうに、叶さんは私から目を逸らさない。

「前とか、僕は覚えてないから分かんないけど。でも、今の僕はAちゃんのこと気に入ってるし、仲良くしたいと思ってる」

「そ、れは、うれしいですけど……」

「だから、避けないでよ。気にしないから、もっと関わってきて。仲良くさせて」

 思ってもみなかった言葉に、思わず目を見開いた。だって、仲良くさせて、なんて。今まで通り、くらいは言ってくれるかもしれないな、とは、予想していたけど。

「その、なんというか、気持ち悪くは無いんですか」

「なにが?」

「……一方的に、色々知られてるって。言ってしまえば、ストーカーとかと何も変わらないと思うんですけど」

 私の言葉に、一瞬叶さんは驚いた顔をして見せた。けれど次の瞬間には、けらけらと大きな笑い声をあげ始める。

「あはははっ!じ、じぶんのこと、ストーカー、って、ん、ふふっ、」

「そんなに笑わなくても……」

 よほどツボだったようで、お腹を抱えて笑ったまま、叶さんはついぞ目尻に涙まで浮かべていた。少しして落ち着くと、彼は指先で涙を拭って、柔らかく笑ったままこちらを向く。

「じゃあ、毎日電話しよ。一日一個、Aちゃんのことも僕に教えて」

「え、毎日ですか?」

「そう、毎日。都合が合わない時はテキストでいいから。そしたら対等じゃない?」

「……わかりました。そんなことで良ければ」

 そんなにたくさん、話せるようなこともないけれど。この世には惚れた弱み、なんて言葉があるように、大切な人の願いというのは断りづらい。頷けば、叶さんは満足気に微笑んだ。あんまりいつも通りの笑顔に、酷く安心する。
 
「叶さん」

「ん、なに?」

「あの、こういうこと言うの、どうかとは思うんですけど。でも、ごめんなさい、言わせて欲しい。私ね、本当に二人のことが好きで、大事なんです。現在進行形ですよ」

 ぱちぱち、と瞬いて、叶さんはうん、と静かにうなずく。

「だから本当に、邪魔にだけはなりたくないんです。二人には幸せになって欲しいと思ってる。これだけは、覚えていて欲しい、です」

 よろしくお願いします、と頭を下げた。こうしておかないと、私は多分、ずるずると自分を甘やかすから。
 叶さんは複雑そうな表情をしたまま、けれど、確かに頷いてくれた。

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(プロフ) - はじめまして!!この作品が大好きで何度も何度も読み返しています。これからも活動応援しています! (2021年8月19日 16時) (レス) id: b829afb215 (このIDを非表示/違反報告)
莉紬(プロフ) - りあさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。細かいところまで気にしていただいて、丁寧にかいた甲斐がありました。ぜひ、今後もお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年6月30日 13時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
りあ - 一気読みしました、、、!とても好きです…!作中にサンダーソニアが出てきたときは思わず声を出してしまいました…!! (2021年6月29日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 神さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。そう言って頂けますととても励みになります。ぜひ、最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年5月11日 22時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして。数日前にこの小説を見かけ、読ませていただいたところ本当に面白くて一気に読んでしまいました。差し出がましくて申し訳ないですが、これからも更新を応援しております。 (2021年5月11日 21時) (レス) id: bf2877755d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年5月5日 0時

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