ショップ ページ19
食事を終えて、バスに揺られて十数分くらい。加えて徒歩二、三分で予め調べておいた外観を見つけて、あそこです、と指をさす。
中に入ると、いらっしゃいませー、と愛想のいい女性の声。ふわ、と甘い匂いが香った。
「なにこれ……造花？」
白いテーブルの上に、インテリアとして飾られたアレンジメント。薄い桃色から濃い朱色まで様々な濃淡が入り交じったそれは、近付けばふんわりと薔薇のような香りがする。
「お客様、ご予約の方お済みでしょうか？」
にこやかな表情を携えてポニーテールを揺らした女性は、ふんわりと百合の香りを纏っていた。制服姿の彼女にスマホの画面を表示する。
「望月さまですね、お待ちしておりました。あちらのお席にどうぞ」
手のひらで示されて、小さく会釈して席に座る。
「予約してたの？」
「はい、そっちの方が安心でしょう？」
「僕が予定あるって言ったら、どうするつもりだったの？」
「え、ひとりで来ようかな、って」
なにかおかしかっただろうか、叶さんはなんだか苦い顔をして、なるほどね、と呟く。
「葛葉の言ってた意味がちょっとわかった気がする」
「え、なんて言われてたんですか」
「ナイショ。あのね」
「はい」
「僕のわがままに付き合ってさっきのお店行ったんだし、Aちゃんも行きたいから着いてきて、くらい言っていいからね？」
はぁ、と気のない返事を返してしまう。いや、だって。
「んん、難しいな。叶さんだってわかると思いますよ、人に迷惑をかけるのが苦手、というか。誘って気を遣われるとやだな、と思うんです」
もちろんそれが自分のエゴであることも、そんなんじゃ人間関係上手くいかないことも重々承知だけど、それでもできる限り人に迷惑をかけたくない。誰かの邪魔になる存在でありたくない。
困った顔をしてしまうと、叶さんもそれに気付いたらしい。まぁいいや、とあっさり話を変えてくれる。
「ところで、ここ結局なんのショップなの？フラワーショップ、にしては花が少ないし」
「お店の運営自体はアロマショップです。叶さんも聞いたことあるんじゃないですか？」
うろ覚えのショップ名を告げれば、予想通り名前は知ってる、と納得したように告げられた。このお店のショップロゴも同じフォントなので、元々既視感があったんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「kne」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凡(プロフ) - はじめまして！！この作品が大好きで何度も何度も読み返しています。これからも活動応援しています！ (2021年8月19日 16時) (
レス) id: b829afb215 (このIDを非表示/違反報告)
莉紬(プロフ) - りあさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。細かいところまで気にしていただいて、丁寧にかいた甲斐がありました。ぜひ、今後もお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年6月30日 13時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
りあ - 一気読みしました、、、！とても好きです…！作中にサンダーソニアが出てきたときは思わず声を出してしまいました…！！ (2021年6月29日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
律(プロフ) - 神さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。そう言って頂けますととても励みになります。ぜひ、最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年5月11日 22時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
神(プロフ) - はじめまして。数日前にこの小説を見かけ、読ませていただいたところ本当に面白くて一気に読んでしまいました。差し出がましくて申し訳ないですが、これからも更新を応援しております。 (2021年5月11日 21時) (レス) id: bf2877755d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：律 | 作成日時：2021年5月5日 0時
