ティータイム ページ17
ふわふわとナイフがはねるパンケーキを切り分け、フォークをぷすりと刺す。
ぱく、と口に入れると、柔らかく香る紅茶の香り。
「美味し〜!」
気分が上がって、思わず声が弾んでしまう。そんな私をくすりと笑いながら、叶さんは自分のシフォンケーキを咀嚼した。
「良かった、このお店当たりだったね」
「うん、すっごく美味しいです」
香りも強すぎないから、とても食べやすい。生クリームをつけて食べるとそれなりに甘いけれど、パンケーキそのものは控えめな味わいで、女性一人でもぺろりと行けてしまう。
合わせているのは無糖のミルクティーで叶さんの方はストレートティーだ。
「いつもティーフレーバーって癖がありそうであんまり手を出さないんですけど、食べてみると全然そんなことないですね」
「え、そうなの?言ってくれたらお店変えたのに」
「あ、いえ、私も美味しそうだな、って思ったのはほんとですし、抹茶は基本的に食べられるんですよ。実際来てみたら、正解だったなって思いますし」
「それならいいけど……」
今度は好き嫌い教えてね?と念を押されて、分かりました、と素直に頷く。というか、"次"があるんだ。そんな些細なことに気づいて、つい頬が緩む。
「そういえば、Aちゃん今日傘なくて平気でした?」
ちら、と窓の方をみて、叶さんは口を開いた。かなえさんは事前に店員さんに説明してくれていたらしく、私たちの席は窓から離れた奥の方。
おかけでまったく日は届かないけど、外はよく晴れて近い席は明るく照らされている。
そういえばコンビニの時と葛葉さんの時は傘さしてたな、なんて思い出して、大丈夫です、と頷いた。
「私、本当は傘さして歩くの苦手なんです」
「そうなの?」
不思議そうに、こて、と少し首が傾けられる。きょとんとした顔は少し幼く、あぁ綺麗だなぁ、なんて思う。
「私、女性としては平均的な背丈ですけど、逆に言えば私よりすごく低い人って珍しいじゃないですか」
「まぁ、そうだろうね」
「叶さんとかもそうですけど、背が高い人と傘さして歩くと、目が合わないんですよね」
別に誰に言ったこともないけど、私は人と話す時目をじっと見るクセがある。上手に生き抜くための術が抜けていないだけの話なんだけど、今でもやっぱり目が会わないとそわそわしてしまうのだ。
あぁ確かに、と叶さんは納得したように頷いた。
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凡(プロフ) - はじめまして!!この作品が大好きで何度も何度も読み返しています。これからも活動応援しています! (2021年8月19日 16時) (レス) id: b829afb215 (このIDを非表示/違反報告)
莉紬(プロフ) - りあさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます。細かいところまで気にしていただいて、丁寧にかいた甲斐がありました。ぜひ、今後もお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年6月30日 13時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
りあ - 一気読みしました、、、!とても好きです…!作中にサンダーソニアが出てきたときは思わず声を出してしまいました…!! (2021年6月29日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
律(プロフ) - 神さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。そう言って頂けますととても励みになります。ぜひ、最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年5月11日 22時) (レス) id: 99f03ec5b8 (このIDを非表示/違反報告)
神(プロフ) - はじめまして。数日前にこの小説を見かけ、読ませていただいたところ本当に面白くて一気に読んでしまいました。差し出がましくて申し訳ないですが、これからも更新を応援しております。 (2021年5月11日 21時) (レス) id: bf2877755d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:律 | 作成日時:2021年5月5日 0時