合わせない波長【利根 大夢】 ページ22
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集中していると時が経つのは早いもので、黒板の上の壁に掛けられた時計が、学力テストの残り時間が僅かであることを示唆していた。
見直しも何回したか覚えていない、最早文字列を見すぎてゲシュタルト崩壊が起きそうな気さえしてくる。
こんな結果の知れたテストは早く終わって欲しい、カンニングだと疑われたくないが為に貧乏ゆすりを我慢する。
理科に至っては自信がなく渋々埋めた回答がある、どうしても苛つきを増加させてしょうがない。
とはいえど、自分が見直しをする間にも他の生徒がペンを用紙に走らせる音が聞こえてくるのは中々悪くなかった。
ここでも自分は人より優れて……基、馬鹿にできる地位に居られるのかと考えれば、自然と心のとっかかりやイライラは収まっていった。
「……そこまで」
終了の合図である先生の声に、周りの生徒がペンを机に鎮座させる。
ふう、と息を溢しながら僅かに体重を背凭れに乗せる。
嗚呼、やっと終わった。
静止し過ぎたせいか、首を傾けるとパキッと骨が音をたてる。
その後に続けられる説明を聞きながら、俺の目線はとある奴を捉えていた。
横一列、女子を取り巻く男子集団。
騒がしくて、元気いっぱいで。
「ムカつく」
大して強くもない癖に。
顔をしかめて、銀髪をくるくると弄りながら六人連中の後を追うように教室を抜ける。
物語の主人公が描くような理想を抱くそんな
どうやって憎まれてやろうかな。
そんな思惑を胸に、そいつらの後ろ姿を観察する。
「要は、エリートは早咲きの実力者、ノーマルは遅咲きの実力者って事でしょ?」
女が人差し指を立てて得意気に説明する。
ノーマルもエリートも大差ない??
……とても不愉快だ。
あんな女に罵られているような気がするのも、それを鵜呑みにしてはしゃぐ輩も。
「……大夢くん? その……疲れてる、の??」
右斜め後ろからかかった声は聞き慣れたもの。
自信の『じ』の文字すらないようなヘタレ、幼い頃からの知り合いである真那斗が、俺の顔色を伺うように怯えながら声をかける。
己の心中を察することもできない真那斗に益々怒りを膨らませながら「なんでもねぇ」と吐き捨て、早足に六人集団に続いて教室に入る。
「……せめてクラスが決まるまでは、大人しくしとかなきゃな」
静かな水面のような声色とは裏腹に、手中の体操服の皺は一層色濃くなっていた。
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おかしな気。【明石姉妹】→←体力テストは只ひたすらに【天冬瘋】
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ヒメアミ(プロフ) - 更新しました!あと続編移行したので皆さんそちらにお願いします!…あと続き半濁音さんに繋げていただけると嬉しいです! (2020年4月3日 15時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 更新します! (2020年4月3日 14時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 終わりました。次の方お願いします。 (2020年4月3日 14時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 更新します。 (2020年4月3日 13時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - すみませんやっぱ止めます…m(_ _)m (2020年4月3日 11時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
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