遭遇【ボルツ】 ページ17
「アイ、仕事始めるで」
《承知シマシタ》
ボルツは部屋の壁に掛けてある白衣と白杖を持ち、相棒であるアイと共に自室と化した病室を出た。目的地は生徒たちのいる病棟。生徒の検査と採血に向かう。
白杖が床をこする音と1人の歩く音、そして無機質な機械音が響く。そんな病院内に、突如扉が開く音が聞こえた。ボルツの真横の病室からだ。
「ヒャッ」
小さな高い悲鳴の主が尻餅でもついたのだろう、振動がボルツの足に伝わってきた。
「あー、えっと、大丈夫か?」
ボルツはその人がいるだろう方向に声を掛けた。アイが音量を小さくしてボルツに伝える。
《2-E神埼藍デス》
点滴で睡眠薬を入れていたはずだが、目が覚めてしまったのか。何て奴だ。
藍は尻餅をついたまま固まっていた。そりゃ目の前に突然頭に包帯を巻いた色黒の筋肉質な奴が現れたら誰だって驚く。今はさらに白衣と白杖も追加されて、怪しさは増すばかり。
さて、どうやって藍を安心させようか。とりあえず名乗るか。だとすると、何と名乗るか。「怪しい者ではありません」、怪しすぎるわ。「私はボルツです」、わざわざ魔王軍の名前使うんはあかんな。「私はヴォルフガング(以下略)」、長いし研究者としての居場所を教えてどうする!
「えっと、よく聞けや?
私は怪しいものです」
ボルツは言ってから気がついた。あかん、これはあかん!
「あ、今のは冗談な!
あのな、ここに集めた奴らは皆して呪いに掛かっとるんや。その呪いを何とかするんにこの病院に集めたんや。お前も早よベッドに戻って寝とけ。点滴抜くんやないで」
口から出任せを言って説得を試みるボルツだったが、藍の心拍が上がっている。どうもさらに怖がらせてしまったようだ。
「とりあえず、ベッドに戻ってくれるか?
俺もこんなやから、お前を運ぶとかできないんよ」
合掌して必死に言うと、藍は怖がりながらもベッドに戻ってくれた。
ベッドに戻った藍にアイが点滴を刺しなおし、藍は再び夢の中に戻ったようだった。
「さて、改めて仕事や、アイ」
《承知シマシタ》
2人は手早く採血を済ませ、自室に戻った。
「にしても、藍とアイって、紛らわしいな」
《何カアリマシタカ?》
「いや、何も無いで」
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ヒメアミ(プロフ) - 更新しました!あと続編移行したので皆さんそちらにお願いします!…あと続き半濁音さんに繋げていただけると嬉しいです! (2020年4月3日 15時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 更新します! (2020年4月3日 14時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 終わりました。次の方お願いします。 (2020年4月3日 14時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
そら*フィア(プロフ) - 更新します。 (2020年4月3日 13時) (レス) id: c283b58b59 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - すみませんやっぱ止めます…m(_ _)m (2020年4月3日 11時) (レス) id: fb659ead07 (このIDを非表示/違反報告)
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