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☆[シグレ]孤独を越えて、孤独に触れて。 ページ2

兄貴と共にあの家を出てから、どれ程の月日が経ったのだろうか。
オレは今更あの家に戻る気は無い。
常に兄貴と比較され、弟だからと
下に見てくる奴らの所になど二度と戻りたくは無い。
兄貴はそれを知りながら、唯一オレの味方をしてくれた。
もうオレは独りじゃない。
だが、何故かオレの心には常に靄が掛かっていた。

今日は兄貴も、同じ雅楽師グループのメンバーもいない。
馴染みの茶屋に足を運び、いつもの白玉ぜんざいと抹茶を注文する。
待っている間にもう一人客が来た様で、反射的にそちらを見る。
一人の女性だ。
いつもオレ達の公演に来てくれる女性。
でも今日の彼女は、どこか物鬱気な表情をしていた。
その表情に、思わず昔の自分を思い出してしまう。
と、頼んでいた物が到着した。
目線をぜんざいに移し、付属の木製の匙を手に取る。
一つ掬って口に入れると、完全に潰れていない小豆が同時に甘く弾けた。
正に、オレの求めていた味。
ふと無意識に、ちらりと目線を先程の彼女の方に向ける。
彼女は何も注文をしていない様で、只々ぼうっとしていた。
時折溜息を吐いている。
と、こちらに気付いた様で控え目に手を振ってきた。
どこか力の無い笑顔だ。
気になってしまい、食べ掛けのぜんざいと
抹茶を持って彼女の元へ向かう事にした。

前の座敷に座り、彼女を見る。
軽い挨拶や自己紹介の後に、直接切り込んでみた。
「先程から浮かない顔をしているが、どうしたんだ?」
『…ちょっと、色々ありまして。』
すぐに話してくれる筈も無いか。
「オレは生まれ育った環境から、そういった顔には敏感でな。
オレ達の曲を聴いてくれるおまえには、笑顔でいて欲しいんだ。
どんな事でも、少しでも良い。オレに話してみてくれるか?」
言っておくが、オレがこんな事を言う事は滅多に無いぞ。
これは全て、彼女の…Aの為だ。
『…恋人に、振られちゃいました。』
Aは今にも泣きそうな顔で、そう声を絞り出してくれた。
隣に移動し、そっとその肩を抱く。
「…辛かったな。オレの胸で良いなら泣くと良い。
少しはスッキリする。」
小さい頃に兄貴にして貰っていた事だ。
彼女は声を漏らさずに、オレの着物を涙で濡らした。

これ以降も、オレとAは逢瀬を重ねた。
そうしている内に、オレの心の靄が晴れた気がした。
彼女の表情も明るくなった。
オレも、Aも、もう独りじゃない。
〜〜〜
またもや前作に頂いていたリクエストです。
リクエストありがとうございました!

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - アメジストさん» ありがとうございます!どうぞ他の作品も楽しんで下さい! (2020年1月28日 18時) (レス) id: b7b3ad2127 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - 完結おめでとうございます!。寂しくなってしまいますが、これからも貴方様の小説を読みます!。アンデルの長編も楽しみにしてます!。それでは、またお愛しましょう!!。 (2020年1月28日 17時) (レス) id: 0a7b322e74 (このIDを非表示/違反報告)
螢羅(K-Ra)(プロフ) - アメジストさん» 応援ありがとうございます!これからも楽しんで書いていきます! (2020年1月15日 19時) (レス) id: b7b3ad2127 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - メッセージを見ましたが、改めまして、リクエストばかりで申し訳ありませんでした!。そして、自身で書きたいものもたくさんあったにも関わらず、リクエストを、お応えいただき、誠にありがとうございました!。これからもこの小説はもちろん、他の小説も応援してます! (2020年1月15日 19時) (レス) id: 0a7b322e74 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - そうでしたか!。読んでみます!。 (2020年1月15日 7時) (レス) id: 0a7b322e74 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年4月28日 15時

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