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いつも通り。
ギリギリの時刻に出社すれば、どこか社内はザワザワしていた。
それはどの階、どの部署へ行っても同じで。
全くいつも通りじゃない雰囲気に疑問を抱く。
なんだ?新入りか?
なんて軽い気持ちで捉えてた。
が、
あまりにも酷く続くそれにうんざりして
昼の休憩中に、トイレで出くわした顔見知り程度の後輩に聞けば。
「あぁ、なんかA部長の噂らしいですよ」
あまりにも気になる意外なその一言に、
ついとっかかって問いただす。
「部長が?なに、」
いや、俺もそこまで知らないんですよね
なんて望んだ反応が返ってこず、思わず落胆。
仕方なく部署に戻ろうと廊下を歩いていれば
不意に聞こえたのは噂の張本人、部長の声で。
ここって何も無くないか?
明らか人が入らないような物置場
別に興味本意で覗いただけだった。
そこにいたのは部長
と
最近よく顔を出しに来ていたキム課長で。
「人来たらどうするの」
「大丈夫、ここは誰も使わないから」
愛してるよ。
その一言を境に2つの影が重なって。
かさ、なっ て………
走った。
知りたくなくて
逃げ出したくて、
全てから逃れたくて。
「A部長、キム課長と付き合ったんだって〜!」
「うそ!あの二人が?最近仲良かったもんね〜」
通り過ぎた際に耳に入ったそれ
そんなの知ってる
知ってんだよ、
誰もいない廊下までたどり着けば
安心からか絶望感からか、足が震えた。
立っているのもままならなくて。
息もたえだえで思うように呼吸ができなくて。
俺わりと、
今までA部長だけが生きがいだったんだよ、
もう何も無くなってしまった俺は。
次は何を楽しみに。喜びに…すればいい、?
身体を預けるように壁にもたれれば、ずるずると足の力が抜けて座り込む。
朝から時間をかけてセットした髪の毛も気にせず、
手のひらでぐしゃりとそれを台無しにする。
誰もいないくせに、
頭を抱えるようにして頬に伝う涙を隠した。
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作者名:あみゅ | 作成日時:2020年3月9日 0時