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「お、はよう…ございます……ミン課長」
顔を見れば思い出す夢の内容に、とにかく逃げ出したくて俯く
穴があったら入りたい
というよりも今すぐに穴を掘って埋まりたい気分だった
「つけてきてねぇのな…、」
「え、？」
落ちた声にふと顔をあげれば、寂しそうな顔をしたミン課長
「俺の香水。つけてきてねぇのな、」
繰り返すように呟いたその言葉に熱を持つ顔
「えと、…、…はい、今日は…。」
ダメだ、昨日から赤面してばっかりだ自分
「つけねぇの、？」
不安そうな顔をして私に問うミン課長からは、確かに昨日私がもらった香水の香りがして
何だか正常に頭が回らなくなって
でも彼の悲しそうな顔は見ていたくなくて
気づいたら変態じみたことを口走っていた
「あ、と…昨日！…寝る前につけました」
何言っちゃってんの私ー！
いや、
事実なんだけどさ！事実なんだけど！！
ほら、ミン課長驚いちゃってるじゃん！
これこの後お前キモイなってマジトーンで言われるやつだよ何しちゃってんの私！！
A26歳人生終了のお知らせ
なんてお知らせしてる場合じゃなくって！
今からでも冗談って言わなきゃ、なんて勢いよく顔を上げれば
「ははっ、」
「え、」
ミン課長は目じりにしわを作るほどに笑顔で
「それじゃあ意味無いだろ、ははは、」
どうやらツボに入ったのか、目の前でかっかっかっか笑っていた
どうやってその笑い声出してるんだろう
不思議に思っていれば急に近づく距離
ふわりと香ってくる香水
彼の肩越しに見える後ろのエレベーターに昨日もこんなことあったな、なんてデジャブを感じた
「か、かちょ、」
首元間近ですーっと空気を吸い込んだ彼は
ふっと笑って言った
「確かに、微かに俺の匂いするかもな」
頭は真っ白で
何回もその言葉だけが脳内でぐるぐるして
まだ香りが残ってたことにびっくりして
目を見開いたまま佇んでる私に
結構長いこと続くもんな、その香水
なんて嬉しそうに呟いた
慌てて首を抑えて彼を見上げればまた距離を詰めてきて
「っ、」
今度は耳に口元を寄せてこう囁いたんだ
.
「明日は俺と一緒のつけてこいよ」
去っていく彼の後ろ姿を見えなくなるまで眺めていれば途端に足の力が抜けて
ずるずるとその場に座り込んだ
両手で頬を抑えれば火傷しそうなほどに熱くて
「…あますぎ、」
あぁ、彼の性格はまるで彼の香水そのものだ
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作者名：あみゅ | 作成日時：2020年3月9日 0時
