召喚された料理人3

経済と文字と割り込み ページ3

エーミールが指さしたページには部屋の構造といくつかの計算式が書かれていた。気に食わなかったとか横線で消されているものもいくつか見られる。するとそれを見たAは『ああ、それですか』と少し恥ずかしそうに言った。

『食堂の構造や必要最低限の料理道具、人件費を計算していたんです。』

Em「なるほど。では、この不思議な文字は？」


不思議な文字というのは当然だろう。そこには漢字で【円】と書かれていた。言っておくとAはこの世界の文字を読むことができ、書くことができる。それは召喚された故に体がこの世界に対応したからこその出来事だが、Aの世界の文字を彼らは知らなかった。気になるのも当然だろう。

『それは私の世界…と言うよりも私の居た国の通貨単位ですよ。エンと読むんです。』

Em｢エン…｡Aさんの世界は独特な文字を使うんですね。色んな形がある。｣

『まあ、私の故郷だと少なくとも3種類の文字を日常で使ってましたからね。』

その言葉に｢3種類も…?!｣と驚くエーミールにAは頷き、カタカナやひらがな、漢字の説明をし始めた。

説明後…………｡

Em｢凄いですね。学び舎も4段階。そのうち2つは国が保証。科学技術や識字率が優れているわけです。これはグルッペンさんに要相談させていただきますね。｣

『ええ。ですが、そのためには良い教育者とお金が必要です。そろそろ食堂を｢Aちゃ〜ん。｣どうかしましたか、しんぺい神様。』

バンッと勢いよく割り込んできたのはしんぺい神だった。何かと思っていればAの手をぎゅっと握りしめてブンブンと縦に振る。その間に「凄いよAちゃん。」水色の着物を揺らしながら嬉しそうな声色で彼は言った。

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